なぜエネルギー効率は向上しない?
台湾では現在電力は不足していないが、将来的に不足すると仮定した場合、政府はまず電力需要の抑制から着手してエネルギー効率を高める努力をするべきであろう。例えば、ピーク時と平常時の電気料金を変え、エネルギー消費量の多い産業の構造を調整し、エネルギー税を課すなどである。
では、エネルギー効率とは何か。その主たる指標に「エネルギー集約度」というものがあり、これが低ければエネルギー効率が高いことを表す。例えば、工業部門の場合は単位当りの生産に要するエネルギー量(うち50%は電力、50%は化石燃料)、住宅・商業部門では単位床面積当りのエネルギー消費量(85%は電力)、交通部門では1キロ当りのエネルギー消費量(98%は化石燃料)であり、全国レベルではGDP一単位当りのエネルギー消費量を指す。
政府が長年にわたって省エネと二酸化炭素排出削減を提唱してきたのも、需要面を抑制するためだ。例えば「省エネ・二酸化炭素排出削減サービス団」を組織し、産業界の技術指導やカーボンフットプリント認証推進を行ない、住宅・商業部門では電気製品のエネルギー効率を定め、グリーン建築を推進するなどしてきたが、その成果は上っているだろうか。
台湾大学大気科学学科の徐光蓉・教授によると、ここ10年、全国のエネルギー集約度は、1000元当り石油9.43リットル相当から8.82リットル相当へ下がっており、各界の努力の成果は見える。しかし、石油化学や製鉄、繊維、製紙などのエネルギー集約産業が工場を拡張したため、エネルギー効率は低下し、2000‾09年の間に、集約度は23%も上昇した。
立法委員の田秋菫によると、エネルギー集約産業は全国のエネルギーの36%(全国の電力の22%)を消費しているのに、GDPには3.86%しか貢献しておらず、非常に効率が低い。政府は省エネ・低炭素化を提唱しながら、他方では大量に二酸化炭素を排出する台湾プラスチックの第6ナフサプラント(全国の二酸化炭素排出量の26%を占める)の拡張計画を認めており、それ以外の努力の成果は相殺されてしまう。
本格的に産業構造を調整して需要を抑制するには「エネルギー税」と「温室効果ガス排出削減法」の施行が最も有効だ。
エネルギー税は、電力会社や石油会社から徴収するため石油や電力の価格は上り、エネルギーを大量に消費する産業は自ずとエネルギー効率向上に努力することとなり、あるいは減産や転換を余儀なくされる。一般の住宅や商店も節電に努めるようになる。
台湾緑党の潘瀚声によると、ドイツやデンマークではエネルギー税実施とともに所得税を引き下げ、汚染を出す者が税を多く負担し、低所得世帯には別の措置をとった。こうした制度はヨーロッパでは十数年前から実施されているが、それによって経済が衰退するどころか、グリーンエネルギーや省エネ産業の成長をも促す結果となった。
我が国の全国エネルギー会議では、党派を問わず誰もがエネルギー税に賛成するが、行政院賦税改革委員会に送られると、そこで止まってしまう。議員が景気悪化や国民負担の増加を理由に反対するからだ。
一方の「温室効果ガス削減法」立法も順調に進まない。
台北大学自然資源・環境管理研究所教授の李堅明は「温室効果ガス削減法」は三段階に分けて実施するべきだと言う。まず企業の現在の温室効果ガス排出量を強制的に調査し、続いて政府が製品別の効率標準(例えば鋼片1トンを生産する時に排出できる二酸化炭素量)を定め、この標準を満たさない時には排出枠を購入させるか罰金を科す。最後に企業別の排出総量規制を実施するというものだ。
総量規制の実施には排出権取引が欠かせず、これは飴と鞭の手段でもある。これによって企業のエネルギー効率は自ずと高まり、あるいはクリーンエネルギーの使用が増える。
しかし同法案はまだ立法院で審議中で、早急な立法が求められる。また、同法とエネルギー税は二者択一なのか、あるいはEUのように、エネルギー大量消費者には総量規制、そうではない者にはエネルギー税で対応するか、という点も明確にする必要がある。
陽光は尽きることのない天然のエネルギーである。かつて人類はそれを建築物で遮ってきたが、今は太陽光発電システムによってビルのカーテンウォールでも発電できるようになった。