家族の解体
家庭の形も多様化して「春節は家族と一緒に」という伝統にも変化が生じている。実践大学ソーシャルワーク学科の謝文宜主任によると、現在の台湾では夫婦と子供の核家族が中心だが、一人親家庭や籍を入れない事実婚、同性愛者の同居、二つの一人親家庭の同居なども多く、一人暮らしの独身者や、猫や犬と暮らす独身者もますます増えている。
こうした変化の下で、親や兄弟以外に誰が家族なのか、大切な日を誰と一緒に、どう過ごしたいか、という問いかけが生じてくる。
例えば、同性愛者や籍を入れないカップルの場合、大晦日にはどちらの実家に帰るべきか、一緒に両方の実家に帰って家族からのプレッシャーに耐えるか、あるいは別々に自分の実家に帰るべきか。
従来の婚姻以外の関係を認める「伴侶法」や「同性愛婚姻法」の成立を推進する婦女新知基金会秘書長の簡至潔によると、カミングアウトしているか否かに関わらず、春節の「一家団欒」は同性愛者に大きなプレッシャーとなっている。
そのため、春節は伴侶と別々に過ごす同性愛者も多く、団欒の喜びを感じられないばかりか、かえって寂しい思いをしているのである。
簡至潔によると、同性愛者が家族の集まりを嫌うのは台湾に限ったことではない。海外の研究によると、クリスマス前後には同性愛者の「団欒鬱」が増え、自殺まで思い詰める人もいるという。こうした経緯から、同性愛者はしだいに家族の団欒から遠ざかっていく。
同じように、シングルペアレント同士が結婚した場合も、春節に子供をどの祖父母の家に連れて行くかという問題で悩むこととなる。
ずっと前に妻を亡くした朱さんは、同じく子供を持つ女性と十年以上交際しているが、なかなか結婚できずにいる。結婚していなければ、春節の際に、自分は先妻の両親のところへ子供を連れていくこともできるし、交際相手も子供を実父に会わせることができるからだ。
「結婚してしまうと四つの家庭の関係となり、彼女も彼女の子供を連れて私の実家へ行かなければならなくなり、状況は複雑になります。人生はわずか数十年なのに、自分から面倒を抱えこむ必要はないでしょう」と言う。
さまざまな要因による家庭の変化から人間関係はますます複雑になり、「この敏感な時期になぜ実家に帰らなければならないのか」という疑問がわいてくる。「春節の帰省」というやっかいな問題を解消するために、この時期に海外旅行に逃げる人も少なくない。