エコツーリズムにしろ、フェスティバルの旅にしろ、あるいは文学の旅や世界遺産を訪ねる旅にしろ、重要なのは何のために旅をするかだ。「旅」という言葉には遊びや散策のほかに学びの意味も込められており、それにより旅はより意義深いものとなる。旅の目的はと言えば、見聞を広めること、地域の人々と交流すること、ストレス解消、ショッピング、異国体験、歴史探訪などさまざまで、求めるものによって旅の形や手段も変わってくる。
台湾では昨今、見学がブームになっていて、各種「体験」を打ち出した観光工場や手作りワークショップ、それらを巡るツアーなどが人気を博している。学校の「社会科見学」のような感じで、大人が子供の心を取り戻せる機会としても愛されている。これらの体験活動は観光工場にとどまらず、ハイテクや精緻な工芸などにも広がり、さらに職人が加わることでより多様な展開を見せるようになった。
今月号の「光華」は、いかにブランドの価値を創出し、消費者とのつながりを生み出すかという角度から、宜蘭の「勝洋水草レジャー農場」と台南の「台湾金属創意館」を訪れた。産業の苦境に直面した彼らが、どのように「経験経済」を活かして新たなビジネスチャンスを切り開いてきたのか、お読みいただきたい。また、100万回以上再生された動画「Mr. Bartender」と「私室」を制作した徐嘉凱にもインタビューした。彼はネットと仮想通貨、ブロックチェーンなどを利用して、映像制作から開始し、没入型エンターテインメント空間構築という夢へ向かって一歩ずつ歩んでいる。
また、取材班は聚楽邦が作り出す「穿越写真館」と芒草心協会の「艋舺走撞街頭」という体感型ゲームを実地に取材した。これらのゲームはプレーヤーの好奇心を掻き立てながら、ゲームを通して都市の歴史や社会問題を考えさせるものだが、それをどのように実現しているのだろう。
旅は自身の経験を振り返らせ、さまざまな体験活動は人の記憶をよみがえらせる。このような感覚は、どれほど多くの資料や写真を見ても得られるものではない。例えば、野球のWBSC世界野球プレミア12で台湾が韓国に勝利した瞬間の記憶、「台鉄弁当フェスティバル」のにぎやかな情景、「鳳嬌催化室」での美の感動、「自転車で行く台七甲線」の開放感など、今月の「光華」をお読みいただければ、それぞれが求める旅や体験を見出すことができるだろう。準備はできただろうか。ぜひ「光華」とともに台湾を体験する旅をお楽しみいただきたい。