WCIT2017台湾開催
邱月香にはコンピュータやITのバックグラウンドはないが、90年代に帰国してICT分野に足を踏み入れ、台湾における情報教育と情報セキュリティの先行者となった。これは邱月香がよく言う巡り合せだけでなく、自身の努力こそが最大の要素である。ビジネスの世界は女性に対する評価が厳しく、より高い専門性を発揮しなければ成功しないものである。邱月香は教えを請うことを恥じず、どんな人も師として、自分を高めていった。「努力に努力を重ねてきました。私ほど真剣な女は見たことがありません」と自分で言って笑う。言葉の端に自信が垣間見える。
真剣で努力を惜しまない女性は、数年前に人生のもう一つのピークを迎えた。2014年、邱月香は中華民国情報サービス産業協会の理事長に選ばれたのである。同年、台湾を代表してメキシコへ赴き、WITSAの総会に参加し、WCITの台湾への招致を働きかけた。
WCITは隔年開催で、理事会はすでに開催地を2018年インド、20年マレーシア、22年アルメニアに決めていた。台湾の開催は早くて2024年になる。だが当時、台湾は開催権獲得に向けてリソースを整えていた。邱月香は「技術の進歩は年単位ではなく日単位です。私たちは変わらねばなりません。毎年WCITを開催すべきです」と訴えた。この言葉は多くの賛同を得て、会場中に拍手が広がった。鉄は熱いうちに打てとばかりに、邱月香は台湾政府が会議の開催を全力で支援する旨を表明し、WCIT2017の台湾開催を一挙に勝ち取った。17年ぶりのWCIT台北開催である。
もう一つエピソードがある。2015年にWITSAのグティエレス前会長が訪台した際、台湾の与野党の人物に会いたいと希望した。邱月香は友人の紹介を通じて、当時の民進党秘書長兼党駐米代表・呉釗燮に引き合わせた。会談中、前会長が呉釗燮に、邱月香をWITSA会長選に出馬させてもらえないかと尋ねた。自分の話題になるとは思いもよらず、またそんな野心もなかったが、呉釗燮は即答した。「もちろんです。出馬は素晴らしい技術外交になります」
この時から重責を担い、2016年にWITSA会長に当選し、WITSA初の台湾出身の会長、そして初の女性会長となった。
2017年、WCIT(世界情報技術産業会議)が17年ぶりに台北で開催され、WITSA会長の邱月香と沈栄津・経済相らが「テクノロジー・カーニバル」のパレードに参加した。