コンサート映像で反響を試す
コンサートを3D映画にするというのは、新しい試みではない。2008年、ディズニーの映画「ハンナ・モンタナ・ザ・コンサート3D」が北米で6500万米ドルの興行収入を上げ、大きく注目された。
アイルランドのロックバンド「U2」も2006年の南米ツアーを3D化した映画「U2 3D」を作成し、世界中のファンがこの映像を通してコンサートの臨場感を楽しんだ。
この映画では、カメラの動きに合わせて、U2のメンバーの表情を追ったかと思うと、自分が客席でペンライトに囲まれてステージを見ているような感覚になり、周囲に汗の臭いを感じない他は、会場にいるのと同じような体験ができる。
「ハンナ・モンタナ」と「U2 3D」は評判も売上も悪くなかったのだが、当時はまだ3Dが本格的なブームになっておらず、これに続くものは出てこなかった。2009年に映画「アバター」が世界的に大ヒットして、ようやく「3Dコンサート映画」がブームになったのである。その後「五月天3DNA」の他に、日本の浜崎あゆみや韓国のスーパージュニアもこの流れに乗っている。浜崎あゆみの「ARENA TOUR 2009 A‾NEXT LEVEL‾」は8月に、アジア初の3Dライブ映画として公開された。
「五月天3DNA」を発行する得芸国際媒体のディレクター陳鴻元は、コンサート物は3D映画の試金石だと考える。人気アーティストには特定のファン層があり、発行元は赤字を心配する必要がないからだ。
また、ライブは花火や爆破などの特殊効果があり、3Dでの再現にふさわしい。「特別な脚本を用意しなくても売れる」という誘因から、アジア各国でコンサートが3D映像の入門編となっている。
「3DNA」の会場は台湾、シンガポール、北京などにまたがり、投資額は台湾では巨額とされる1億台湾ドルに達する。五月天の華人圏での人気を考えると、元は十分にとれると陳鴻元は言う。
陳鴻元によると、同社は今TVドラマ「オl子英雄」の映画版を計画中で、監督の蔡岳勲は3Dでの制作に意欲的だったが、編集作業が掌握しきれないというのであきらめたと言う。
3D映像を普及させるために、国立実験研究院ハイ・パフォーマンス・コンピューティング・センターのスタッフは、布袋戯(台湾伝統の人形劇)で知られる台湾南部の霹靂マルチメディア社を訪れ、撮影クルーとともに試験撮影を行なった。わずか4分の映像のために12時間もかけて視覚や立体効果を確認したことからも、その撮影の難しさがうかがえる。