さまざまなルートで国内市場を開拓
海外旅行中に現地のスーパーマーケットを訪れ、売られている生花の美しさに足を止めたことのある人も多いだろう。欧米では、生花がスーパーの売上の3割を占めるところもあるのだが、台湾ではどうだろうか。米国系の好事多(コストコ)で少し花束を扱っているだけで、街中には花屋もあまりない。
生花業界が困難を乗り越えられるよう、政府と業界の団体が協力し、さまざまな手を打った。大安森林公園や円山公園、士林官邸、新烏日駅などのパブリックスペースに花のカーペットや立体造形を設けたり、第一線で戦う医療関係者や検疫官などに花を贈呈したりした。また台北や彰化などの学校と協力して生花をDIY活動に活用するなど、生花に対する国民の関心を高め、さらに便利な販売ルートを開拓していった。
4月下旬からは、政府の農業委員会と台湾区花卉発展協会が中心となり、国内のスーパーマーケット——全聯福利中心(PX Mart)や家楽福(カルフール)、楓康(Funcom)などと協力して生花の販売をスタートして消費者が花をより買いやすいようにした。
生花はデリケートな商品で、畑で収穫してから輸送、販売までさまざまなプロセスがあり、スーパーで販売するにはゼロからスタートしなければならなかった。「新型コロナの影響と政府の支持がなければ、やろうとは思わなかったでしょう」と鍾国成は言う。
これまで台湾のスーパーは生花を扱っておらず、末端の小売店に卸すのも初めてのことだった。コロナ禍がなく、政府の支持が得られなければ実現しなかっただろうと鍾国成は言う。
市場の反応は予想を超えるもので、情報が伝わると多くのネットユーザーから問い合わせがあった。台北の50店舗で生花を扱い始めた全聯は、年末までに100店舗に増やすとしている。
5月に入って感染拡大が収まると、景気はしだいに回復し始め、母の日もあって生花の価格は底を打ち、7月に入ると前年同月の価格より14.6%も上昇したのである。
生花は確かに生活必需品ではない。「最初は悲惨なことになるだろうと思っていましたが、市場の反応は分からないものです」と鍾国成は言う。コロナ禍で人々は外出を控えるようになり、海外ではロックダウンも実施されたが、多くの消費者が逆に花を買うようになった。花は家の中に彩りを添え、心をいやす効果もある。感染拡大が抑え込まれると生花市場が急速に回復したことからも、花に触れる習慣が育てば、将来の産業発展にもつながることがわかる。