無添加のアイス
店名の「1982」は呉書瑀の生まれた年だ。自分たちは豊かな時代に生まれ、工業発展の恩恵を受けてきたが、作物の単一化や農薬過多など食の安全の問題に直面してきた。
そこで1982法式氷淇淋では環境を破壊しない食材を使い、しかも乳化剤や増粘剤を使わず、牛乳と卵と砂糖をメインに無添加のアイスを作ろうと考えた。「祖父は1960年代から無添加のフランス風アイスを作っていました」と言う。祖父は小売りも卸売りもしていて、無添加アイスも量産できていた。大手食品メーカーが無添加アイスを作らないのは、できないからではなく、やろうとしないだけなのである。
食材によって水分量や糖分、脂肪分は異なり、同じ農地の作物でも気候の変化などで風味が変わる。これで無添加アイスを作るには、食材の特性を十分に理解しなければならず、毎回調整が必要だ。しかし、食品工業においては標準化が求められ、乳化剤や増粘剤、合成香料などが入った粉末を使うことで、常に同じ味ができるのである。
そのため、添加物が入ったアイスは正常なもので、乳化剤などを加えなければアイスクリームはできないと考える消費者もいる。しかし、卵や牛乳の成分は天然の乳化剤である。2003年、台湾では「毒澱粉事件」が発生した。あるメーカーが工業用増粘剤である「無水マレイン酸」を澱粉に添加し、それを使ったタピオカや魚肉団子などが市場に出回った。その後も工業用防腐剤を加えた寒天粉がプリンやアイスクリームに用いられるという騒動があった。食の安全をおびやかすこうした行為に、「正当氷(Justice Ice Cream)」を創設した李孟龍は激怒した。そこで年収100万元のプロジェクトマネージャーの仕事を辞めて花蓮に帰り、無添加のアイスを作って、一人の力で添加物まみれのアイス市場に対抗しようと考えた。
最初は屋台で、原価30元のアイスを20元で販売した。とにかく無添加のアイスを味わってもらうためだ。貯金を使い果たしたらまた就職すればいいと思っていた。ところが多くの仲間から続けるように励まされ、彼が販売価格を200%上げた日にも多くの客が集まってきた。
無添加のおいしいアイスクリームの開発に力を注ぐ呉書瑀は、人々と大地の間を結び付け、連続3年A.A. Taste Awardを受賞している。