十数年前、私は教育関係の最初の論文『学校教育の自由の検討:教育関連法規範の分析』を高雄師範大学が主宰する「全国教育学術シンポジウム」で発表した。その後、同論文は『世界宗教学刊』に掲載され、国立編訳館(後に国家教育研究院に併合)の教科書計画においては、私の「台湾の教育法規における宗教教育の適法性研究」が収録された。当時、台湾の体制内・体制外の教育の自由や内容、限度などについて全面的に検討・分析したことで、その後「台湾の教育に活路を見出す」というテーマが、台湾の教育報道の主軸のひとつとなったのである。
英国の比較教育学の先達、マイケル・サドラー(1861-1943)は「学校外の物事は学校内のそれよりはるかに重要だ」と述べている。ここへグローバル化や均質化が加わり、教育の性質や方法、役割、位置付けは大きく変わった。現代の学校教育は、もはや教室での知識の伝授ではなく、自己の文化や環境問題、科学技術の運用といった全方位の理解と学習となっている。生徒が将来直面するのは世界各地からの挑戦なのだから、ローカルを中心として世界と向き合うことが必要となる。もちろん、その過程では調査や選択、分析といった学習プロセスが必要なのは言うまでもない。
こうした考えから、今月の『光華』のカバーストーリーは「一味違う教育」をテーマとし、既存の教育の枠を抜け出して、台湾の非伝統的な教育の場をご紹介する。子供たちのために昆虫館を運営する昆虫飼育の達人・柯心平さん、花蓮で全アミ語教育を行なうタマロク共学園とピナナマン河辺教室、それにコベストロ社とLISが行なう実験を中心とした科学教育、台湾生態登山学校が実施する野外体験教育などだ。これらに参加した生徒たちは、学びながら己を知り、学習への情熱とモチベーションを取り戻す。
このほかに今月号の「台湾をめぐる」では、桃園市龍岡にある忠貞新村の「異域故事館」と、『光華』取材班が自ら自転車で体験した「雲林の旅」をご紹介する。「産業イノベーション」では台湾の優れた企業である「捷流閥業(Value Valves)」と「大同磁器」の創業以来の物語をお読みいただきたい。「コミュニティ」シリーズでは、クルディスタンからやってきて台湾人と結婚したオスマンさんをご紹介する。さらに海藻養殖専門家の柯志鴻さん、DNA鑑定の達人である陳福振さんの物語も感動的だ。「文化」の角度から見ると、「教育」は文化が校内・校外という権力構造の中で、どのように生まれ、伝えられ、あるいは拒絶されてきたかの過程を示すものでもある。『光華』は台湾の優れた文化を伝え広める役割を担っており、それはまた市民教育のひとつの形でもある。