天下第一の店
市場に客を呼び戻そうと、台北市市場処は経営方針の刷新などについて、絶えず各市場の自治会と話し合いを持っている。
市場処市場経営科の劉仲偉さんによれば、朝の早い営業時間を変えるよう、市場処は各市場に呼びかけているという。働く女性に合わせた夕方営業の市場なども、一つの方向性として考えられる。
台湾では唯一の、MRT駅ビル内に作られた西湖市場を、劉さんは例に挙げる。改札口を出てすぐという格好のロケーションにありながら、1階が生鮮食品、2階が飲食店や生活用品という配置が裏目に出ているという。つまり、1階の生鮮食品部は昔ながらに昼には閉店してしまうため、その時間帯にここを通る客はひっそりした市場を眺めるだけで、2階はまだ営業していることを知らない人も多い。もし生鮮部が通勤客に合わせて営業時間を延長すれば、競争力はさらに増すだろう、と劉さんは考える。
こうして刷新を模索するほかに、台北市市場処は2008年から定期的に「伝統市場フェスティバル」を催し、各種展示販売や人気投票などによる市場全体のマーケティングに努めている。
昨年、インターネットで行った「天下第一の店」投票では、のべ41万人が票を投じた。これによって営業成績も1割増えたと見られている。
投票は、飲食店、惣菜、生鮮食品、日用品の四つのジャンルに分けられ、各3位以上には市場処から「天下第一の店」ペナントが授与された。昨年は惣菜部門でテーマイベントを組み、「市場で最もおいしい水餃子」投票を行った。その結果、参加した100店の中から士東市場の「123水餃」が堂々一位に輝いた。それがメディアで報道され、商売はさらに繁盛するようになったという。
今年の「伝統市場フェスティバル」は旧暦の5月5日端午の節句前に開かれる予定だ。市場処経営科の科長である王夢龍さんによれば、テーマイベント以外にも、例年通り、ネットの「天下第一の店」投票も行うことになっており、すでに多くの店が腕によりをかけて味を追求しているだけでなく、市場や店を次々と回って採点を始めている客も多いという。
刷新に努めれば、「現代社会に溶け込んだ市場」は夢ではない。長らく市場に足を運んでいないあなた、久々に市場をぶらついてみてはどうだろう。こんなすばらしいものが自分の身近にあったのかと、驚くことになるかもしれない。
新竹の竹東市場には、猪籠モI(餡を包んだ客家の餅、本ページ右下の写真)やモI条(米粉で作った麺)など客家特有の食べ物、それに現地の農家が漬けたオリーブや客家酸菜(左下)などもあり、台湾各地からも買い物客が訪れる。