新北市八里の丘の上、巨大な船のように見える荒々しい建築物は日本の建築家‧丹下健三の手になる台湾聖心女子大学(現在は聖心女子高校)である。
1967年に竣工したこの建物は、事務棟と宿舎とカフェテリアの三つの部分から成り、水平に伸びていく建築物の、棟と棟を結ぶ箇所や曲がり角には円筒の塔が立ち、外壁は洗い出し仕上げとなっている。
一見すると素朴な建物だが、各所のテラスやカフェテリアの間仕切り、塔の中の階段にはスレートや玉石が用いられ、それらが変化を豊かなものにしている。
特に、太陽の角度によって屋内も屋外もさまざまに表情を変えるところに注目したい。斜めに突き出した窓の影が刻々と姿を変え、聖堂の天井にあるステンドグラスから射す光には思わず息をのむ。
築50年になるが、学校は丁寧に手入れをしており、今も当初と変わらず、巨匠の生み出した繊細かつ精緻な空間を味わうことができる。