出会いから共同制作へ
パフォーミングアーティストとして、彼女は自身の経験を演繹して舞台劇を作り上げた。文化的思索に富んだこの作品は、人文主義を重んじる欧州で彼女が積んできた訓練の成果でもある。彼女はさまざまな衝突や矛盾の源を探求し、同時に「私は何者か」という大きな問いに答えていく。このアイデンティティをテーマとした作品を羅芳芸は『Unsolved(未解,懸)』と名付けた。
今年9月にドイツのエッセンで初演され、11月には台湾でも上演される同作品は舞踊劇場アイデンティティーシリーズの第一作である。
「聚合舞(ポリマーDMT)」は「聚合物(ポリマー)」と同じ発音で、さまざまなジャンルの、背景の異なる人が集まることを意味する。この作品『Unsolved』において、アートディレクターと振付を担当する羅芳芸は劇場空間デザイナーの陳成婷と手を組んだ。二人とも台湾出身で、長年ドイツで舞台芸術に携わってきた。強いアイデンティティを持つ二人の議論が、この作品のコンセプトを支えている。
ともにドイツに暮らしながら、別々の都市で活動していたため、二人は2016年まで互いを知らなかった。羅芳芸はフォルクヴァング芸術大学を出て以来ずっとエッセンで活動し、一方の陳成婷はベルリン工科大学舞台・空間設計大学院で学び、ベルリンに暮らしていて、距離も遠く離れていたからだ。
羅芳芸は、さまざまなプロジェクトに参加しながらドイツの業界のやり方を理解し、経験を積んできた。また一人のアーティストとして自分にどんな能力があるのかを探索していた。そうして、親子舞踊劇場『ルシオ』のプロジェクトで、羅芳芸が舞台デザイナーをネットで募集した時、陳成婷が応募してきて二人は出会い、すぐに意気投合したのだった。
「羅芳芸と出会い、二人とも今までに同じような作品を作り、同じようなことを語りたがっていることがわかり、それなら私たちの作品を作ろうということになったのです」と陳成婷は言う。
ヨーロッパの舞台芸術はアメリカの商業主義とは大きく異なる人文主義と美学を持ち、陳成婷はそこに惹かれてドイツに留学した。 (拉風影像提供 ,林科呈撮影)