お気づきだろうか。台湾では青果市場がますます充実してきている。伝統的な朝市からスーパーマーケット、住宅街のオーガニックショップや各地の小規模農家が集まるファーマーズマーケットまで、季節の野菜や果物が美しく並び、その選択肢の多さに、台湾に暮らす外国人は驚く。都会に暮らしていても田園を身近に感じられ、菜食がいたるところで気軽に楽しめる。
20年近く出版企画に携わってきた私にとって、菜食は常に深く考えてきたテーマの一つだ。台湾には宗教的な理由による菜食主義があるが、貧しかった時代の、油分と塩分の多い加工食品から始まり、さまざまな公益団体や著名人が野菜本来の味に注目するようになり、学界からも菜食が健康に良いという報告が次々と出されるようになった。こうして台湾では2010年には10%だった菜食主義者の割合が2018年には13%に増えた。世界的に見ても、菜食主義者が31%を占めるインドに次いで2番目に多い国となったのである。
台湾のベジタリアンの理由は、宗教、健康、エコロジーといったものから、近年は味覚の追求にまで広がり、世界で最もベジタリアン‧レストランが多い国の一つとなっている。アメリカのCNNも2017年4月の報道の中で「世界のベジタリアンの都トップ10」の中に台北を挙げた。野菜の旨味や香り、味わいは肉や魚とはまったく違うものだが、結局は「おいしい」かどうかが、菜食に興味を持つきっかけになる。炒めもののよい香り、焼き上げた時の豊かな風味、麺に絡めたソースの濃厚さ、歯ざわりや噛み応えなど、ベジタリアンではない人も、その料理がノーミートであることに気づく前に野菜を食べきってしまう。
地球温暖化がますます大きな問題となる中、マイクロソフト創業者のビル‧ゲイツ氏は世界に向けて植物由来の食のメリットを訴えており、世界の二大ファストフードチェーンであるマクドナルドとバーガーキングも「代替肉」のハンバーガーを売り始めた。エコノミスト誌も、2019年を「ヴィーガンの年」とした。菜食は大きなムーブメントとなり、次世代のマーケットにおいても無視することのできない大きな流れとなっている。
菜食は変化に乏しく、味も単調だとお考えだろうか。今月のカバーストーリーで、台湾のベジタリアン運動、ベジタリアン産業、ヴィーガンレストラン、そして著名人の経験などをお読みいただきたい。若い世代の多くも、独自のスタイルで次々とヴィーガン料理を打ち出している。台湾流の菜食創意とはどのようなものなのか。台湾のベジタリアン‧パワーを再び世界に知らしめようではないか。