アイス作りのサイエンス
理工系出身の彼は、やはり科学理論を重んじ、洋菓子作りの基礎に独自のアイディアを加え、Double Vをユニークな店にした。
ここのアイスを食べたことがあるなら、そのすごさがわかるだろう。種類が多く、開発力があり、どれも同じように繊細で滑らかだ。
アイスクリームは科学と味覚を総合したアートである。食材によって異なる温度における物理的変化も違ってくるため、アイスを作る際には職人の判断が非常に重要だ。Double Vでは、それぞれのフレーバーに独特の配合があるが、どのフレーバーも、アイスクリームとして保存した状態で同様の柔らかさにする必要がある。店のフリーザーからアイスをすくう時は、一般の半球形のディッシャーではなく、しゃもじのような平らな道具を使う。そうすると、アイスが固すぎればすくい取れないし、柔らかすぎると落ちてしまう。職人がアイスクリームの状態を完全に掌握しているからこそ、平らな道具が使えるのである。
安全と衛生にも高いレベルを要求している。フルーツは必ずきれいに洗い、牛乳も必ず高温殺菌する。アイスクリームメーカーも二つの機能を一体化したものを使っている。「一つでも多くの道具を使えば、その分、汚染の可能性が増えるからです」と言う。アイスクリーム用のフリーザーも特別にイタリアから輸入した。それぞれのアイスを独立して保存できるもので、アイスの風味が互いに影響しあうことはないからだ。
Double Vはこれまでに450種類のアイスクリームを開発し、季節によって売るものを変えてきた。冬はクリーム系リキュールやウイスキー、ナッツなど、芳醇な風味の物、夏はフルーツをメインにする。また、一般によく見られる抹茶や黒糖などは一気に5~10種類の味を作り、単一の素材からさまざまな風味を引き出す。洋菓子を学んだ陳謙璿は、スイーツからもアイディアを取り入れ、カラメルリンゴや、レモンタルトのクリームの部分からアイスを作ることもある。
一般の洋菓子は華やかさを積み上げることができるが、見た目に手を加えられないアイスクリームには「決定的な一撃」が必要だと陳謙璿は考える。
陳謙璿は、ストレートでありながら繊細なアイスクリームを作り続けている。
バレルごとに独立したフリーザーを用い、平らなサーバーを使う。いずれも職人のこだわりだ。
陳謙璿の初めての店は、開店費用が限られていたためすべてシンプルに作り、ネオンの代わりにストリートアートを看板としたことが特色になっている。
新鮮さと多様性を追求するため、Double Vでは多くのストックを持たず、職人は多様な食材を処理しなければならない。
町にネオンが灯る頃、Double Vも営業を開始し、忙しい一日を終えた人々の心を甘いアイスでいやす。