「体験」がマーケティングに
普段は触れることのない板金工場は一般の人にとって新鮮なものだ。解説を通して板金加工の流れや各種金属の特性も分かる。
創意金属館では板金加工を体験してもらうため、半田付け体験や金属製品DIYカリキュラムを打ち出し、ロボットやスマホ立て、オルゴールなどの製作を通して「板金」に触れてもらう。
大学のある先生が見学に訪れた後、台湾の板金加工技術は大きく進歩しているというのでテレビで紹介してくれたこともあった。
かつて鉄工・板金工場と言えば、3K(危険、汚い、きつい)と言われたが、台湾創意金属館の開放的な工場を見学すれば、油まみれで汚いというイメージは払拭され、また板金関連学科の「校外学習」の場にもなっている。
「かつてはベテラン板金職人と言えば、十本の指が揃っていない人も大勢いました」と解説の先生は語る。しかし現在では金属を折り曲げる機械はコンピュータ制御で、赤外線センサーがついていて、異常があれば機械はすぐに停止する。また力を必要としない油圧装置となっていて女性でも簡単に操作できる。さらには座った状態での操作も可能になっている。
郭治華は工場の生産ラインを見ながらこう話す。今では工場に多くの若い技術職や実習生がいて、精密機械を操作するベテラン職人の熟練した技術を見習いながら、医療機器の筐体などを製造している。高度な技術を要する仕事なので待遇も悪くなく、若者が板金加工の世界に入ってくるようになった。業界ではやはり人手不足が続いているが、同社では工場の従業員が100人から300人まで増えたのである。
注目したいのは、台南高級工業職業学校の板金科は結局廃止されず、1クラス増えて「金属創意班」という名称に変わったことだ。これは経験経済の意義を証明するもので、体験を通して企業の価値やブランドを継承していけるのである。
志鋼金属の郭治華総経理が観光工場「台湾金属創意館」を設立したのは、深刻な人手不足を解消するためだった。
両手を板金折り曲げ機に見立てて、板状の金属からロボットを組み立てる。
半田付け体験教室で、子供たちは本格的な作業着を身につけて板金加工技術を体験する。(台湾金属創意館提供)
板金工場を見学すると、女性従業員が折り曲げ機を操作していた。
台湾初の板金をテーマとした観光工場「台湾金属創意館」。