20の作品は、南迴への20の懸け橋
近年の台湾では、商業的色彩の濃いさまざまな大型フェスティバルが多数開催されており、短期的には経済効果を上げている。あるいは日本の越後妻有の「大地の芸術祭」トリエンナーレのように、アートを地域活性化の動力として観光を発展させている事例もある。
だが、キュレーターの林怡華はこう考えた。この計画の資金は南迴道路拡張計画が地域の文化発展のために還元する交付金から来ているが、この地域ではアートプロジェクトはおろか、大規模なイベントも開催されたことはい。インフラもまだ不十分な僻遠地域であるため、一挙に押し寄せる観光客に対応する準備もできていない。
そこでプロジェクトの準備段階から、林怡華は経済効果を主たる目的にはしなかった。ほとんど人も訪れない山麓や海岸、村落などに点在する作品は、観光客にとってのアクセスの良さなどは考慮していない。日頃は訪れる機会のない場所へ行ってみてほしいからである。作品をメインとした宣伝も行なわず、代わりに50回以上にわたって教育的な内容の文化活動を行なった。言い換えれば、知られていない南迴という地域に、外部と結ぶ架け橋を一つひとつかけていく作業であり、それこそが今回の活動の目的なのである。
そこで、今回は多くのアート・プロジェクトが「アートのためのサービス」であるのとは異なる展開を中心に据えた。台北市立美術館の林平館長は、今回のプロジェクトにおいて、アートは媒介であって最終目的ではないと指摘する。アーティストが現地に長期滞在して生み出す作品は、それ自身が多くの情報を発信するだけでなく、現地住民をも揺り動かす可能性がある。「このような作品は、それに触れた人の考えを変え、何らかの関係を生み出す可能性があります」と言う。
これまでサイクリストたちにとって、台湾一周で必ず通るべき道とされてきた南迴だが、今回のアート・プロジェクトを通して多くの人がこの地を訪れ、滞在するようになれば、それだけで十分に成功と言えるのである。
南迴の住民の多くは先住民族で、至る所でオーストロネシア系の文化が見られる。
《夢を呼ぶ粟酒》黄博志/プランド・アートワーク/安朔集落美美ヘルスサロン(山治プロジェクト提供)
《名前?たくさんあるよ》呉思嶔/ミックスメディア・インスタレーション/大鳥渓の河畔
《南へのベクトル》游文富/立体インスタレーション/下南田海浜
《海から昇る月の物語 》楊雨樵/パフォーマンスアート/台9線大武浜海公園の砂浜
《移動する光景・流れる音楽とダンス 》李世揚/パフォーマンスアート/南迴鉄道・普快車3627
《回遊音楽の集い》文化学習イベント/土坂集落新興橋の下(山治プロジェクト提供)
《再生》豪華朗機工/インスタレーション/大鳥休憩站横の浜海公路(荘坤儒撮影)
《Vuvu & Vuvu》デクスター・フェルナンデス/ペイント/大武中学校
《Inaの思い出の花園》謝聖華/展示プロジェクト/南方以南サービス センター