転換とアップグレード――次世代型店舗
昨今、市場には次々と「次世代型店舗」が出現している。
今年10周年を迎えるコーヒーショップ・チェーンの「85度C」は一年余りの準備を経て、昨年、第二世代店舗への転換計画をスタートさせた。85度CのPRディレクター鍾静如は、消費者のライフスタイルの変化に合わせて次世代型の店舗を打ち出すことにしたと説明する。内装やメニューも変え、これまでのテイクアウト型から、ゆったりとくつろげる空間に変えていくという。
安さを売り物としてきたスーパーの全聯福利中心も今年7月、徐重仁総裁の指揮の下、嘉義と台南に次世代型店舗を9店オープンした。
新しい店舗の面積は従来に比べて広く、通路もゆったりしていて生鮮食品の比率は50%まで引き上げられ、店内にカフェやピザ店も設けた。そして小規模農家のための「農家の直売所」が大きな特色となっている。
徐重仁によると、「農家の直売所」は、地元農家の作物の直販を行なう日本の「道の駅」から取り入れたアイディアだと言う。ローカル化と転換は世界の小売業の趨勢で、全聯の次世代型店舗では、生鮮食品の品目を増やすだけでなく、卸売業者の手を経る回数を減らして台湾農業に協力したいと徐重仁は考えている。
全聯の蔡篤昌・総経理によると、従来の契約農家からの仕入れとは異なり、次世代型店舗の「農家の直売所」では農家が自分で価格設定できるようにしており、全聯は包装とマーケティングだけを行ない、費用として価格の7.5%を受け取る。
この方式を導入しているのは嘉義と台南の9店舗だけだが、反響は大きく、多くの農家から問合せが来ている。「これからは農家の方々も自分のブランドストーリーを持てます」と言う。
サービス業は国内の雇用の6割を提供しており、台湾経済にとって重要な柱だが、雇用の多くは小売・卸売や飲食業に集中している。朱浩によると、台湾のサービス業は今も付加価値が低いという課題に直面しており、今後の深化と革新が付加価値を高める鍵になるという。
また、サービス業が大規模化、国際化する際には経験の複製と人材育成が欠かせず、従来の経営モデルを突破できるかどうかが課題となる。
この5年、商業発展研究院では全国のサービス業の調査を幾度も行なってきた。その結果、少なからぬ小売・飲食チェーンやネット業者がテクノロジーを活かし、在庫や仕入れ、売上を同時に管理するPOSシステムやiPadなどを用いてサービスの質を向上させていることがわかった。
積極的に欧米市場に進出している茶飲料チェーンの「都可(Coco)」では、2010年、企業管理をサポートするERP(企業資源計画)システムを用いて後方の在庫統合に成功し、学習システムを確立して海外従業員を訓練し、数十種の飲料の味と品質を維持している。
1999年設立、傘下に「元定食」や「麻布茶房」など十数のブランドを持つ展圓国際公司も、iPadとPOSシステムを統合し、注文がそのまま厨房に伝わるようにしたことで、回転率を2割高めることに成功した。
だが、こうしたテクノロジーの活用による規模の追求は企業経営の一部に過ぎない。「サービス業にとっては、ハードパワーよりも、特色を出すことの方が重要な次の一歩です」と朱浩は言う。
サービス業の基本は人である。注意深く観察し、人を感動させてこそ厳しい競争の中で生き抜くことができる。転換期を迎えた台湾のサービス業は、消費者のニーズをきめ細かく観察して人々に感動をもたらしてこそ、台湾経済を発展させる重要な力になれるのである。