澎湖諸島最南端の七美島。その絶景を訪ねる。数千年かけてできた波蝕棚「小台湾」、海岸に佇んで砕ける波を見つめる玄武岩の獅子、悲しい言い伝えのある「望夫石」。島のそこかしこに、大自然が作り出した造形が望める。
その昔、漁師は潮の満ち引きを利用して、玄武岩とサンゴ礁で、二つのハートが重なりあう形の「石滬」を作り、魚を獲った。海に頼り海と共に生きていた。今では気候変動で魚は減ってしまったが、恋人が訪れるスポットになっている。
1980年代の七美は水産資源が豊富で、全島人口は七千人を超えた。漁業資源が枯渇しつつある今(2019)年は暖冬で、海苔も不作だった。海での暮らしが立たなくなり、七美の住民は一千世帯三千人余りに減った。出ていった人の多くは台湾本島で働いている。夏の旅行シーズンには、毎日住民より多い二、三千人の観光客が訪れる。
生存の最後の知恵は「持続」である。気候変動によるリスクとチャンスに直面し、「七美スマートグリッド」計画は、二酸化炭素排出を削減する再生可能エネルギーという持続可能なソリューションであるのみならず、台湾のグリーンエネルギー技術のパイロット版なのである。
七美では各世帯が消費する電力に、太陽光パネルによる再生可能エネルギーが接続されている。
台湾電力七美発電所制御室では、計器の表示で一目瞭然だ。全島の午前10時10分の電力消費負荷は919.9kW、うち太陽光発電が225.7kW、ディーゼル発電が756.1kWである。
所長の陳永宗は地元七美出身である。七美は離島独立型電力系統になっていて、主にディーゼル発電機による電力供給だと説明する。現在ディーゼル発電機は4基あり、1基につき1000kWを出力できる。トコブシ養殖業者の衰退に伴いピーク時の電力消費が減り、今後10年は電力不足の心配がないとされる。昨年のピーク時電力消費量は1750kW、年間の電力消費は約780万kWh、電力供給コストは約1億3000万元だった。
更に、離島の七美に発電用の軽油を本島から運ぶため、燃料コストが高くなり、七美の1kWh当りの発電コストは12元かかっているという。しかし、電気料金は台湾本島と同じ2元(使えば料金が高くなる累進制も本島と同じ)である。台湾電力は1kWhごとに10元の損失になる。
七美島は台湾で最も遅くに電力が供給された離島の一つである。