体験厨房、産地の食卓
宜蘭県頭城、梗枋漁港にある「船長娘」の林淑貞は「産地の食卓」をアピールし、卸売業者を通さない販売を目指している。
かつて大渓小学校で幼児教育を担当していた林淑貞は、今は夫の漁船の財務と補給を行なっている。その話によると、近年は漁業資源が枯渇し、以前なら近海で魚が捕れたのに、今は東シナ海まで出なければならなくなり、一度出漁すると2週間は帰ってこられない。さらに、エサ代や燃料費、それに外国人漁船員の人件費が上がり、漁獲高が減っているので、なかなか利益が出ない。漁獲高が多い時も、卸売商に買いたたかれてしまうのである。
林淑貞は5年前にマーケティングの修士課程に学び、「体験厨房と調理教室」を打ち出して、企業による社員旅行などに体験コースを提供している。梗枋漁港を訪れた旅行者は、まず彼女による生態解説を聞き、それから旬の海産物を自ら調理する。彼女の指導を受けながら、つみれを作ったり、タチウオやアジをソテーしたりする。旬のイカをはさっと茹でるだけでよい。タレをつけずに食べると、客はその甘味を楽しむことができる。
「ぜんぜん生臭くない!」「レストランで食べるイカと違う」といった声が上り、ここで直接海産物を購入して買っていく。これが「産地の食卓」の目標なのである。
魚楽天地直售製造舗の何立徳CEOによると、台湾の他の地域と同様、宜蘭の漁村でも多数の養殖池が放置されていて、雇用も少ないため、働き盛りの人々は都会へ出ていってしまう。荘囲では放置された養殖池が全体の7割に達する。
「最初は町の資源を棚卸していただけですが、しだいに深みにはまってしまいました」と話す何立徳は、養殖池を復活させるために、文化ワークチームの「荘囲十八島」と民宿と養殖業者を統合して「宜蘭斑」ブランドを打ち出した。
その方法として「漁人故事館」「解説教室」「直販所」「食材レストラン」の開設、放置された養殖池の活用などがあり、体験とサービスを通して、産地直販と地方創生を目指している。
観光客はトコブシの養殖について説明を受けた後、現地の直販所で新鮮なトコブシを買うことができる。