映像メディアの交流
やがて台湾のアイドルドラマ『流星花園』が放映されると台湾ドラマ・ブームとなり、華人だけでなくマレー人も台湾のF4のファンになった。
好享放送(Enjoy TV)のCEOで、マレーシア人と結婚した台湾出身の周学立は、かつて香港ドラマ一辺倒だったマレーシアのテレビ界に台湾ブームを巻き起こした人物だ。彼女は、国光芸校(現「国立台湾戯曲学院」)卒業で、演劇制作スタッフとして25年の経験を持ち、ダトゥ葉霆劭と結婚後、マレーシアに暮らす。
周学立はマレーシアでも専門性を発揮、長年のキャリアで築いた人脈を生かし、台湾とマレーシアのリソースを結び付けてテレビ番組を制作してきた。また、中国大陸の江蘇テレビやマレーシアのテレビ局とも合作で番組を作る。「私の役割はプラットフォーム提供のようなもので、台湾の人材をマレーシアや中国大陸に連れて行き、人材を広く知らしめ、各国の協力を進めます」と周は言う。長年の観察から「台湾の芸能人はフレキシブルで、言わずとも効率よく動いてくれるので、楽に番組作りができます」と言う。台湾の人材は優勢を占めるが、今後も多方面での合作を促せば、皆に活躍の舞台を広げることができる。
2012年、周学立は映画界に進出した。2015年には『我的MR.Right(私の運命の人)』を製作、台湾の庹宗華や林美秀などの有名俳優に、マレーシアの謝麗萍と陳慧敏、そして江蘇テレビのキャスター蘇暢など、3ヵ国の人材を起用して将来の華語映画合作のモデルを示した。
マレーシアの映画・テレビの発展に、台湾は重要な役割を果たしてきた。クアラルンプール中文映画テレビ協会(KLCTFA)会長の葉霆劭は「マレーシアの娯楽産業のうち、華語映画産業は発展が遅かったのです」と言う。
マレーシアでは政策的な制限から映画製作に取り組もうとする華人が少なく、発展が遅れ、人材も不足してきた。2010年、阿牛が『初恋紅豆氷(初恋のあずきアイス)』を撮った際、台湾の著名司会者、張小燕がインタビューの中で「マレーシア映画では華語の台詞の割合が60%を超えると外国映画と見なされ、20%の娯楽税を取られる」と言ったのがメディアで取り上げられた。そこでマレーシア政府が法律を改め、やっとマレーシア華語映画は発展を始める。
2015年、KLCTFAと駐マレーシア台北経済文化弁事処が合同で「マレーシア台湾交流映画祭(MTFF)」と「金蝶賞」を開催、台湾とマレーシアの映画12作品を招き、監督、脚本家、プロデューサー、俳優などによるフォーラムや、6日間計42回の映画上映を行った。葉霆劭は「これは良いスタートとなるでしょう。今後、台湾とマレーシアがさらに多くの交流や協力の機会が持てればと思います」と言う。
とりわけマレーシアでは、テレビの1日平均視聴時間が都市部の家庭で3.7時間、郊外で4.3時間とされ、テレビは現在でもマレーシア人の重要な娯楽なのである。マレーシア国営テレビは2018年に全面的にデジタル化される予定で、周学立と葉霆劭はそれを好機ととらえている。彼らの経営するEnjoy TVが、チャンネル経営のライセンスを取得して全面華語放送が認められた暁には、台湾とマレーシアの協力をさらに進めることができ、人材、資金、市場のいずれの面でもウィンウィンの成果が得られると考えるからだ。
台湾の流行音楽をよく耳にし、台湾ドラマを見て、台湾で出版された本を読む。長年の間、台湾とマレーシアの文化交流は密接に行われ、台湾文化はマレーシア人の暮らしの中に深く浸透してきた。台湾とマレーシアが関係をさらに深めつつある現在、文化のソフトパワーはなくてはならない役割を果たすはずである。
映像業界におけるマレーシアと台湾の人材交流をより盛んにし、協力の機会を増やしていかなければならない。 (Enjoy TV提供)
マレーシアの華僑青年視察団は21日わたって台湾を訪れ、さまざまな民間芸術に触れた。
(右)音楽交流は非常に盛んである。マレーシアの歌手・馬嘉軒は3回にわたって台湾のオーディション番組「超級星光大道」に招かれた。(Enjoy TV提供)
マレーシアで年に一度開かれる「海外華文ブックフェア」は多くの人出でにぎわう。(大衆書局提供)
大衆書局の書架には、必ず台湾人作家の作品が並んでいる。