工芸からアニメへ
黄勻弦の右手親指の付け根についた硬い筋肉は、彼女の工芸人生の証しだ。彼女は人形作りの基本工程を見せてくれた。まず粘土をひと塊取り、手で押してこねる動作を何度も繰り返して粘土内の不純物や空気を押し出す。やがて粘土は光沢のある丸い花のような形になる。「これは『菊練り』と呼ばれます」
それから流れるような手つきでそれを円筒形にして胴体を作ると、ハサミで魚の尾を切り出してから、ヘラを押し付けてエラ、目、口を形取り、最後に金属管の斜めに尖った方でウロコを1枚ずつ生み出していった。これであっという間に本物そっくりの金魚の出来上がりだ。
吹き飴細工や造形菓子のように、練り粉人形も一時的な存在で永久に残るものではない。玩具の少なかった昔は、職人たちが小麦粉に水や油を混ぜてさまざまな形を作り出し、子供たちを楽しませた。遊んだ後も、かまどに放り込んで焼いた後に灰を払い落とせば、おいしくて楽しいおやつになった。「父の子供時代の思い出です」
家族で練り粉人形の屋台を出していた頃を思い出して彼女はこう言う。「混ぜれば何種類もの色が出せるので生地はほんの数色でよく、あとはヘラ、ハサミ、管、割り箸などの道具を一つの箱に詰めれば仕事に行けました」
屋台ではその場で出された客のリクエストをわずかな工程で生き生きとした人形にする。腕の立つ職人なら電光石火、まさに神技だ。
「練り粉人形はカスタマイズ、個別化を追求します。工業製品のように量産や標準化を求めません」と黄勻弦は言う。これが、質感の表現を得意とするストップモーションにマッチする。彼女の作った人形を見ても、肌にうっすらと残る指紋、ハサミで切り出した指の様子、ヘラで引いた口の形など、彼女にしかない特徴がにじみ出ている。
2022年金馬奨最優秀短編アニメ賞にノミネートされた余聿監督の『島影』。フェルトを主な素材にした幻想的な作品だ。(踩影子停格動畫工作室提供)