文林経済体
頼皓韋は、文林銀行を順調に運営するには通貨に対する信頼がなければならないと考えた。まずは文林通貨の価値を確立し、生徒が自由に好きな商品を選べるようにしなければならないのである。そこで思いついたのは文房具である。文房具なら生徒は必ず買うだろうと思ったのだが、その狙いは外れた。子供たちに聞いてみると、文房具は親が買うもので、むしろ玩具や人形やお菓子の方が良いということだった。
そこで頼皓韋は、台北一帯の玩具問屋を訪ね歩き、子供たちが気に入りそうな商品を集めた。こうして少しずつ生徒の好みを理解し、商品の種類は増え続け、職員室の廊下に文林売店が開かれたのである。
売店のレジでは店員を務める生徒がバーコードを読み取り、貨幣を受け取る。20分の休み時間に4人の店員が何十人ものお客に対応しなければならない。レジ担当の生徒は教頭先生に「忙しくて大変」と言うが、そこには仕事に対する誇らしそうな表情が見える。
教育学部で図画工作を専攻した頼皓韋は、文林銀行を推進するまで金銭管理には興味がなかったが、プランを順調に進めるために、通貨や商店経営、バーコードの原理などをあらためて研究した。通貨は毎年新しいものに交換するが、コンピュータで全校生徒の貯蓄額を見れば、流通している金額は掌握できる。
商品価格の調整やプロモーションなどを通して文林通貨に対する子供たちの興味はますます高まり、適度なインフレやデフレも生じる。例えば、毎年年末に販売する福袋にも値付け戦略がある。初年度は30元、翌年は99元、今年は150元である。「価格は生徒たちの貯蓄額によって決めており、安すぎてはいけません。今は一人当たり平均月99元の収入があるので、大半の生徒が買えますが、一ヶ月の収入を超える額になると生徒は悩むものです」と頼皓韋は笑う。悩むということは考えることなのである。こうして一歩ずつ文林通貨を運営してきた。見学に訪れた金融業界の関係者も、この完備した経済制度に驚いたという。
頼皓韋は文林銀行計画を推進する中で、生徒に正しい金銭感覚と働く態度を教えている。