量から質へ
比例代表制というのは、もともと政党や派閥の利益を超えて多様な声を議会に取り込むための制度で、この男女比を5対5にしたことで、この2期の立法院には見識のある女性議員が増えた。
会計士出身の国民党立法委員、羅淑蕾は2007年に比例代表制で当選し、会計士らしい客観的かつ信用を重んじる精神で、民生関連の予算案を審査している。金融監督管理委員会幹部の給与を削減し、煙酒公司や漢翔公司の不正を暴くなど、優れた業績を上げ、5回にわたって「公民国会監督連盟」から優秀立法委員に選ばれ、財政委員会と交通委員会でトップの評価を得た。
だが、最近はガソリン代と電気料金の値上げやアメリカ牛輸入問題に対する批判的な発言のために党内で孤立を余儀なくされている。「多くの人は、与党の議員は政府の政策を支持するべきだと考えていますが、それは大きな間違いです。立法委員になったのは国民のためであって、自分の良心に背くことはできません」と語る。
今年、台湾団結連盟の比例代表で当選した林世嘉の反骨精神は、長年の社会運動から来たものだ。過去十数年、彼女は毎年ジュネーブで開かれるWHO年次総会に赴き、「TAIWAN」の文字をプリントしたベストを着て「台湾医界連盟」を代表して抗議をしてきた。今年5月には立法委員の身分で入場しようとしたが、ベストの文字が敏感なことを理由に入場を拒まれたが、あきらめてはいない。これは民主社会における立場の表現方法であり、国民に「外交空間を自ら制限してはならない」と警告を発しているのである。
政治大学政治学科教授で婦女新知基金会常務理事を務める楊婉瑩はこう説明する。政治は伝統的に男性の領域で父権観念に満ちており、また利益関係が複雑に絡んでいる。こうした領域に絶えず女性が参画してこそ、父権政治の概念と現状を少しずつ崩していくことができるのである。
楊婉瑩が、立法院各委員会の召集委員の権力行使モデルを研究したところ、委員会内の女性委員の比率が一定の値(25~30%)を超えると、召集委員は「支配式」ではなく「賦権式」の態度を採るようになることが分かった。強硬表決を行なうのではなく、話し合いを重んじ、民主的な分権を強調するようになるということだ。「一人の女性に期待することはできません。委員会全体の男女比が重要なのです」と言う。
イギリスのサッチャー元首相は、まだ保守的だった1970年代に、強い意志でジェンダーと階級という二重の壁を乗り越えて権力の頂点に立った。写真はメリル・ストリープ主演の映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』。