自在な釉薬の手法
陶芸創作は美学であると共に、精密工芸でもある。「自在に描きながら緻密な技術も必要です」と、中国伝統の黒陶、彩色陶器から、結晶釉の研究に進み、自身の様式を生み出した。
「進めるうちに、現有の窯では満足できなくなりました」と、孫超は技術者としての特質を見せて、自身で窯を設計して注文製作した。アトリエに置かれた電気窯は、その大きさから動かす角度まで精密に計算されている。その精密さには、夫人の魏彤珈も溜息をつくほどである。
「実は窯に創作を任せているのです」と言う通り、窯の中で釉薬は流動し多彩に変化する。「厚いところと薄いところでは効果が違います」と言い、釉薬の微妙な変化を理解し、精密に思い通りの効果を上げていく。
「釉薬は不思議で、考えに沿って動くのです」と言うが、思うままに動かすには、自在に濃淡を加えることで、雲のような千変万化を生み出す。
「釉薬をかけだすと、途中で止められないので体力を使います」という。重いスプレーガンを手に、作業台の前に1時間、2時間と立ち続け、すべての画面を一気に仕上げる。灰白色の混沌に見えるが、すべての構図が孫超の脳内に展開し、鋭い目で精確に吹き付けていく。
結晶釉による作品の面白いところは、同じ条件で吹き付けるのに、微細な部分では人の力でコントロールできない差異が生じ、全く異なる結果が生まれるところである。予期できない捉えどころのない窯変は、成功の喜びとなることも、失敗となることもある。「完璧主義者なので、気に入らないと壊してしまいます」と、微細な瑕疵でも、その鋭い目を逃れることはない。
「彼の作品は遠くから見ても近くで見ても、どこから見ても美しいのです」と、彫金芸術家でもある妻の魏彤珈は鑑賞者の視点から孫超の作品の美を語る。捨てた結晶釉の欠片の中から妻が美しい部分を切り取り、精緻な作品に仕上げるのを見ると、孫超は「あんな失敗作も、彼女の手にかかると美しい作品となります」と驚く。
温和で優しい心遣いのある魏彤珈は、愛を込めた尊敬と称賛の眼差しで孫超を受け入れてくれる。「今は幸福です」と、十数年前に最初の妻を失った悲しみを乗り越え、現在の夫人魏彤珈とは深い愛情で結ばれている。
完璧を追求する孫超は、納得のいかない作品はすぐに叩き壊す。妻の魏彤珈は、その破片の中から美しい結晶を拾い集めてアクセサリーを作り、新たな命を吹き込む。(荘坤儒撮影)