中国語を学び観光大使に
1月中旬、民生社区の3,coのカフェスペースで第一週の講座が行われた。小ぬか雨でも学生のやる気は損なわれない。時間になると、日本やカナダから来た学生8、9人が腰かけて、茶文化のレクチャーを受けた。教室で一字一句を復誦するのと違い、東呉、師範大、文化大の華語センターに散らばる外国人学生が店に足を踏み入れた瞬間から、台湾本場の雰囲気の体験が始まる。
スペースを提供する3,coは1993年の創業、台湾でデザインされた家具を海外で販売していた。数年後、3,coは国内に戻って店舗をオープンした。現代的デザインを伝統食器に注入し、生活美学の創意を謳い、身近な存在となった。講座で使う器は、すべて3,coと台湾のデザイナーとの協力の結晶である。高雅貞店長によると、3,coは台湾精神あふれるオリジナルデザインと茶の文化との融合を試みた類似の講座を行い、好評を博してきた。「これを機に台湾文化を外国人学生に紹介したい」という。講師が「包種」「東宝美人」……と台湾四大茶系を紹介する。続いて淹れたお茶と色を丁寧に観察し、最後にじっくり味わう。「中国語が上手でも下手でも、台湾茶芸を感じることはできます」
アルメニアから来たVarditer Harutyunyanさんはポーランド帽をかぶり、おしゃれなワンピース姿が学生の中でもひときわ目立つ。文化大学華語センターで学ぶ彼女は三度目の訪台である。3年前、旅行会社の仕事でアルメニアのプロモーションのために初めて台湾へ来た。
たった3、4日の多忙なスケジュールで、台湾の温かみが深く心を打った。仕事柄、彼女は世界中を回るが、ヨーロッパに比べ台湾社会は温かいという。中国語が全く分からないのに道に迷い、どう道を聞いたものかと悩んでいると、台湾の人々が話しかけてきて、スマホで調べ、身振り手振り行き方を教えてくれた。ヨーロッパなら聞いても肩をすくめるか、相手にする暇はないと手を振るかである。
Varditerさんは新しいものに触れることが好きだ。台湾の人・物・事をよく知るには中国語を学ぶのが唯一の道だと知っていた。2014年11月、仕事のオフシーズンに台湾で華語を3カ月学び、中国語の上達を目指して、今年再び訪台した。
台湾の話になると彼女は目を輝かせる。ヨーロッパ人には印象の薄い台湾を、彼女は前からかなり知っていた。大学で国際関係を専攻し、卒論は米・中・日・台の国際関係の考察だった。遠く国交もなく、互いに親しみがない二つの国を行き来する彼女は、最高の観光大使になった。アルメニアから遠いアジアの台湾を売り込み、台湾にはよく知られていないアルメニアを紹介する。今年3月、台湾で「アルメニア祭」を計画している。しっかり紹介するつもりである。
お茶講座でVarditerさんは、テイスティングや台湾茶に興味津々である。2014年の講座が終わった時には、台湾高山茶をお土産に買い込んだ。友人も彼女の「洗脳」で台湾ファンになり、今年は団体で「台湾茶芸の旅」に来た。
もう一つ、著名なカフェ・バレエでは、ロシアやスペイン、シリア、ドイツなど世界各地の学生が講座の開始を待っている。文化大学華語センターで勉強する鈴木澄子さんと玉城妃加里さんも席についている。68歳の鈴木澄子さんは若い時に台湾に惚れ込み、台湾で生活したいと思ったが、仕事や家の都合で実現できずにいた。2、3年前、退職してようやく台湾に来ることが出来た。一人で台湾で学び、一回りも二回りも若い世代と華語センターのクラスメートになった。
同じクラスの玉城妃加里さんはアイドルを追って台湾までやってきて、中国語を学んでいる。数年前、台湾のタレントが一挙に日本に進出し、人気グループF4のドラマ「流星花園(花より男子)」が日本に登場した。アイドルが現れると興奮して叫んでしまうが、言葉が通じず思いが伝わらない無念さから、中国語の勉強を思い立った。
沖縄のホテルで働いていた時、台湾人の口ぶりや様子が沖縄の人とどこか似ていて親しみを感じ、台湾を知りたいと思うようになった。玉城さんは台湾に来る前から、台湾で長年仕事をしていたお茶の先生から台湾茶に触れてきた。世界に知られる日本茶より、台湾茶の清々しい香りや、喉から広がる爽やかな甘みが好きだという。
2015年9月、玉城さんは仕事を辞めて台湾で中国語を学ぶことにした。たった5ヶ月だが中国語は流暢だ。勉強の合間には猫空ロープウェイで、先生やクラスメートと山へ行ってお茶を楽しむ。中国語を学び、猫空へ行く——彼女の願いは一つひとつ実現していく。あとは専用の茶道具が見つかれば、好きなだけ台湾高山茶を味わえる。
アルメニア人のVarditer Harutyunyanさんは仕事で台湾に来て以来、台湾が大好きになり、茶芸も夜市も気に入っているという。(台湾創意経済促進会提供)