サステナビリティとフェアトレード
故郷のコーヒー豆ブランドの知名度を高めて農家の収入を増やし、そこからさらにコーヒー豆の品質を高めていくといのが彼女の希望である。
コーヒー農園では収穫時は忙しく、臨時に雇う人手も足りなくなる。たわわに実ったコーヒー豆は熟した赤い実だけを選んで収穫し、未熟なものは残さなければならないが、少ない報酬で選びながら収穫するのは時間がかかり、効率も悪い。
収穫した豆の熟成度がまちまちだと、焙煎後の品質にも影響する。そこで沈培詩は、農家の人々に収穫方法を教えつつ、SNSを通してコーヒーを愛する人々に声をかけ、ボランティアを募集する。一杯のコーヒーが出来上がるまでの大変な生産過程に参加してもらおうという考えで、そこにはサステナビリティとフェアトレードの理念も込められている。
沈培詩は、タイ・スペシャルティコーヒー協会(SCATH)の会員で、定期的に協会メンバーやボランティアを率いてタイ北部の山岳地帯へ赴き、コーヒー農家に協力している。
彼らは野外に簡単なテントを張って寝泊まりし、昼間はそれぞれコーヒー畑へコーヒーの苗を届けて一緒に植える。しかし、山岳地帯では気候や緯度などの条件はさまざまで、それぞれの畑にふさわしい品種も異なる。実際に植えてみなければわからないことも多く、土壌にあう品種を見出すのには長い時間がかかる。
現地の農家と良好な関係を築くのは、売買の利益のためではない。沈培詩は長靴を履き、スコップを手に土を掘って苗を植える。未来の希望を象徴する一つひとつの苗を自ら植えながら、彼女は自分も農家なのだと言う。
夜になると、虫やカエルの声が響き渡る中、仲間たちと語り合う。タイ各地、世界各地から集まったコーヒーを愛する人々と一緒にコーヒーを味わいながらコーヒーについて夜中まで語り合うのである。山で淹れるコーヒーは格別においしいと沈培詩は言う。
沈培詩は、タイ北部のコーヒーを高品質のブランドとして打ち立てたいと考えている。第93師団コーヒー荘園ブランドのコーヒー豆は、すべて品質と、環境の持続可能な発展を考慮したもので、どの山で生産され、どのような処理工程を経たか、誠実な生産履歴が公表されている。農家に対しても合理的な取引価格を提示することで農村の生活は改善し、それがさらに良いコーヒー豆の栽培につながり、消費者はより質の高いコーヒーを飲めるということで、好循環が生まれる。
沈培詩は、故郷のコーヒー豆を活かして起業し、「持続可能な発展とフェアトレード」を理念に一歩ずつ歩み、原料の品質と流通ルートを掌握してきた。
沈培詩は定期的に台湾とタイを往復しており、コーヒーフェアなどに参加している。最近は、台北で「コーヒー・シェア会」を開いて93師珈琲を正式に台湾に持ち込んで販売を開始すると宣言した。将来的には台湾に支店を開きたいと考えている。93師珈琲を通して、タイ北部残留軍の生きざまを伝えるとともに、台湾とタイの農業技術協力と持続可能な発展およびフェアトレードをさらに進めていきたいのである。
沈培詩はタイ・スペシャルティコーヒー協会のメンバーとともに定期的にタイ北部を訪ね、コーヒーの苗の植え付けに協力している。(沈培詩提供)
たわわに実ったコーヒー豆は、赤く熟した実だけを選んで収穫し、まだ赤くない未熟なものは残さなければならない。
一杯のコーヒーができるまでには、数々の大変な過程がある。
沈培詩はタイ北部のコーヒーを高品質のブランドとして打ち立てたいと考えている。第93師団コーヒー荘園ブランドのコーヒー豆は、すべて品質とサステナビリティを考慮したもので、どの山で生産され、どのような処理を経たか、誠実な生産履歴が公表されている。