自転車で心の風景を
台湾一周には精神力が求められるが、自転車競技の選手も、常に限界に挑戦している。
リオデジャネイロ五輪に出場した黄亭茵はスポーツ一家の出身で、母親はかつてソフトボールの台湾代表選手だった。以前は水泳選手だった彼女は、小学6年の時に学校の水泳部が解散してしまい何をしていいのか困っていた時、母親の友人である楊東蓁コーチの手配で楠梓中学の自転車部に入り、それから自転車人生を歩み始めた。
水泳の訓練で彼女は高い心肺機能を具えており、自転車チームでは男子と一緒に厳しい練習をしていたため、すぐに国際大会で頭角を現し始めた。最初は短距離のトラックレースを専門としていたが、自分に挑戦しようと中長距離のロードレースに挑戦し始めた。週に6日、ハイスピードで80キロ以上を走った。「山から吹き下ろす風に遭うと、戻るのに倍以上の時間と体力が必要でした。風こそ自転車の最大の敵です」と言う。
2016年に開かれた崇明島一周世界女子ロードレースで、ピンクのウエアを着た黄亭茵が優勝、「ピンクのキャノンボール」と称えられた。これをきっかけに世界的なプロ選手になり、イタリアのセルヴェット・フットオンのプロチームに加わった。世界で戦うには、知力、体力をますます充実させていかなければならないと言う。
2016年7月、彼女は世界三大レースの一つであるジロ・デ・イタリア女子に参加した。10日にわたって800キロ余りを走るレースである。曲がりくねった道路と山岳の斜面を前に、途中で棄権する選手も多いが、黄亭茵は気力でこれを乗り越え、台湾の女子選手として初めて完走した。まだ26歳の彼女は、これからも世界レベルのプロ選手としてチャレンジを続け、自転車で世界各地の風景を見ていきたいと語る。
一方、「ダウンヒルの女王」と称えられる周佩霓は、以前は陸上競技の選手だった。コーチから投擲を勧められたが、成績が上がらず落ち込んでいた時に、先輩からマウンテンバイクでの気分転換を勧められ、それが人生の転機となった。「当時は午後4時に授業が終わると山へ向かって自転車を飛ばし、授業もさぼるほどオフロードにはまってしまいました」と言う。山林の大自然、ダウンヒル、ジャンプなど、身体を動かすのが好きな周佩霓は力を発揮する舞台を見出した。
クロスカントリーではテクニックと全身のバランスが重視される。曲がりくねった山道では地面の状況や傾斜も随時変化する。時間的にはロードレースほど長くはないが、それに負けないほど体力を消耗する。
明るく楽観的な黄亭茵(右)は世界で活躍する自転車選手となり、自分の人生を切り開いた。