旬の味・カジキ
レストラン「旗遇海味」支配人の林昱浜は、突きん棒漁で獲ったカジキを仕入れていることについて、こう説明している。銛で仕留めたカジキは6~8時間で水揚げされるため鮮度が良く、急速冷凍すれば最高の状態が保てる。それに曾祖父の時代からこの地で魚を獲っていて漁師の苦労が分かるがゆえに、良い価格で買い付けて彼らに報いたいし、そうすることで突きん棒漁を守っていきたいのだと。
旬の味を求めるなら、シロカジキ漁の最盛期は9~11月だ。林昱浜によるとシロカジキとバショウカジキの脂がのっている部位は刺身に向いており、とりわけシロカジキの身は淡い茶の香りに似た風味があり後を引く。5~7月が旬のバショウカジキの身は鮭に似た色合いで、その刺身は「金瓜肉」(南瓜の果肉)と呼ばれている。
カジキの切り身や腹の部分は薄塩をしてフライパンで焼いても、ネギを入れて醤油味でソテーにしても美味しい。背びれは醤油、酒、胡麻油で炒め煮にしても、焼いて食べてもよい。尾びれはゼラチン質が豊富で、醤油、酒、胡麻油で煮たものは、地元で「海の豚足」と呼ばれている。
一年を通じて水揚げされるメカジキは最も骨が少なく、カジキの中で最も肉質が良いので、切り身を醤油味でソテーにしても、フライにしてもよく、味噌汁にも合う。4~6月によく獲れるマカジキもすべての部位が美味しく食べられる。
クロカジキは魚でんぶや魚そぼろに加工できる。林昱浜によると、通はカジキのそぼろを好むそうで、しっかりとした食感があり、ご飯にもお粥にも合うそうだ。シャリッとしたでんぶは台湾のおにぎり「飯団」の具にしても、目玉焼きと一緒にマントウに挟んでもよい。
自転車で台湾一周をしているチェコ人学生のTobias Naasは、醤油味のカジキのソテーとご飯の取り合わせを絶賛した。そしてイカの炒め物も食べたと言い、クロアチアへ家族旅行に行った時の美しい思い出がよみがえったと付け加えた。
確かに素敵な旅に美食は欠かせない。成功を訪れたら、カジキのとろみスープやカジキのさつま揚げなど地元の味が堪能できる。成功漁港では異なる漁法で獲った魚があると知るだけでなく、魚のせりもぜひ見てほしいし、成功海洋環境教室で突きん棒漁の文化にも触れてほしい。運がよければ修理したばかりの船がドックから進水する様子も見られるだろう。成功鎮の歴史的建築物である菅宮勝太郎の旧居を訪れてもよい。建物を管理している新港教会は当時の記憶を留めるために無料のガイドを行っていて、成功港を造り、台湾を愛した日本人の物語を旅人に語ってくれる。ついでにカフェ「眺港」に寄っていけば、コーヒーを飲みながら港の景色を楽しむことができる。海と語り、海洋文化をより深く知れば、海をより大事に思えるようになるだろう。
屏東県東港で水揚げされるカジキは主に延縄漁で獲ったもの。
カジキ、カンパチ、カツオ、クロマグロは、それぞれ突きん棒漁、一本釣り、ひき縄釣り、延縄漁の異なる漁法で獲っている。
焼いたカジキの切り身に醤油をかけた台湾らしい一品。
ゆで卵入りのカジキのさつま揚げは、東港の華僑市場でイチ推しの軽食だ。
クロカジキは魚でんぶや魚そぼろに加工できる。そぼろはしっかりとした食感がある。