書籍と非書籍の間
誠品が新時代に直面するのは、蔦屋書店のような新形態の書店の進出も、オンライン書店の競争もある。誠品傘下にはオンライン書店もあるが、あまり強くない。陳頴青は笑う。「店舗経営が成功しすぎたんでしょう」
確かに、誠品は陳列とともに、店内イベントにも心を尽くす。誠品講堂(The Eslite Forum)は1997年にスタートし、専門家を招き、芸術‧建築‧映画から歴史‧文学‧趨勢まで、年間数百回から今日では年間数千回のセミナーを開催し、知識を求める社会の風潮を牽引している。
誠品講堂の「レギュラーメンバー」である作家‧楊照は、自らの「奇妙な」講座を振り返る。ボードレールの詩とデリダの脱構築など、何の実用性もなく、事前に読書まで要求したにもかかわらず、毎回百人以上が集まり、毎期定員を超え、途切れることはなかった。「不可能なことが誠品では可能になります」楊照は、誠品は知識を魅力的にするという。
また、誠品は多彩なイベントを展開していった。展示‧パフォーマンス‧画廊など、読者は「書籍と非書籍の間」を遊走した。そして敦南店では数多くのイベントの第一回が行われた。1995年、敦南店の移転に際して、18時間のノンストップコンサートを開催した。1996年の室外コンサートは、クラシック、ロック、エレクトリック、フォークを融合し、13週続けて週末の夜に開催した。
二十余年、読者と敦南店との対話は数えきれない想い出を作ってきた。2020年5月31日に閉店の消息が伝えられると、多くの人が驚愕し、名残を惜しみ、各地から別れを告げに来た。ある男性が車いすの父を押してきた。呼吸器をつけた老人は、若い頃に通った敦南店に、力が残っているうちに昔を懐かしみに来たのだという。
誠品は、24時間営業の書店は継続するというが、敦南店は記憶の中の存在になる。昔、報道記者が呉清友に、誠品の1号店‧敦南店に未練はないかと尋ねた。呉は心静かに答えた。大切なのは敦南店が読者に何を残せたか。印象や記憶を残せたなら、それで十分なのだと。
屋外コンサート、読書フェスティバル、閉館カウントダウンなど、誠品は数々のイベントを催してきた。
屋外コンサート、読書フェスティバル、閉館カウントダウンなど、誠品は数々のイベントを催してきた。
屋外コンサート、読書フェスティバル、閉館カウントダウンなど、誠品は数々のイベントを催してきた。
誠品敦南店は2020年5月31日に幕を閉じるが、その記憶は永遠に人々の胸に刻まれている。