本格的な台湾の味を
台湾のハラールレストランやムスリムフレンドリーレストランと言うと、トルコ料理やインドネシア料理を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、「せっかく台湾に来たのに外国の料理しか食べられないというのは残念なので、私たちはハラール認証を取り、ムスリム旅行者にも本格的な台湾の味を楽しんでもらいたいと考えました」と話すのは超秦グループのプロジェクト‧マネージャー蔡国憲だ。
同グループの本業は鶏の食肉処理で、董事長の卓元裕は40年にわたってこの事業を続けてきた。質の良い台湾の鶏肉を世界中の人に食べてもらいたいと考え、食肉処理工程の一部でムスリムの従業員にコーランを読んでもらうようにし、2015年にハラール認証を取得した。
これをきっかけに超秦グループは傘下のフライドチキン専門店‧炸鶏大獅をムスリム‧フレンドリーへと転換する努力を続けてきた。ハラール認証を取得した食材を使えばよいというだけではない。本来の味を維持するために下味や調味料などを一つひとつ調整し、満足できる味を追求してきた。例えば同店お勧めの「台式椒塩」は、サクサクに揚げたチキンを容器に入れて塩コショウやニンニク、トウガラシなどを加えてまんべんなく味をまぶしたもので、台湾らしい味が楽しめるが、塩加減や辛さにはさまざまな比率があり、どれも考慮しなければならない。
こうして一年の試行錯誤を経て、2016年、炸鶏大獅南港店が最初にハラール認証を取得した。台湾でもハラールのフライドチキンが食べられるようになったと知り、陽明山に暮らすムスリムの家族がわざわざ車でやってきた。その時の感動の表情を、店員たちは今も忘れられないという。私たちにとってごく日常的な軽食が、台湾に暮らすムスリムにとってはこれほど得難いものなのである。こうして他の支店も次々とハラール認証を取得し、炸鶏大獅の知名度はムスリムの間で広まっていった。公館店には付近の台湾大学や台湾科技大学のムスリムの学生や、台北清真寺の信者がやってくる。取材当日も大安森林公園から買いに来たという新住民に出会った。公館店の売上の4割はムスリムが占めているという。
炸鶏大獅はハラール認証取得後、東南アジア諸国へも積極的に展開し、現地でも同認証を取得している。今ではマレーシア、インドネシア、カンボジアにも「大獅」の店舗があり、「人種や性別、宗教などの分け隔てなく、すべての人に台湾のおいしいフライドチキンを食べてもらいたい」という初心を貫いている。
早くからムスリムフレンドリーな環境を整備してきた香格里拉レジャー農場では、閩南式の建築物や民俗活動などがムスリム旅行者を楽しませる。