陽光が庭の桜を照らして分厚い原木のテーブルに降り注ぎ、すだれの上に月桃の枯枝が伸びる。時がゆっくりと流れ、身も心も穏やかに楽しめる雅宴が始まろうとしている。

空間も料理もすべてご主人である林炳輝さん(左)の創意とセンスによるものだ。仏光人文社会学院芸術学研究所の林谷芳所長(右)は、林炳輝さんと意気投合し、ここで民族音楽や禅の講座を開いている。

すっきりとした美しさ

食養山房に入ると、中国の徽州から取り寄せた茶色のすだれがかかり、広い店内は四つの空間に区切られている。草木染めの服を着た店員が静かにお客を案内する。

席に就くと、人の背丈より高い山桜の枝が埔里製の黒い水がめに差してあり、その下に小さな蝋燭の火が揺れている。清々しい古琴の調べが窓の外の山の青さと呼応し、文人のような気分になって肩の力を抜くことができる。ここがかつてカラオケの歌声が響き渡る地鶏料理食堂だったとは想像もできない。

1200坪の土地の150坪しか使わず、２メートルのテーブルを10卓しか置かないというのは大変な浪費に思える。「あと10卓置けますが、それでは私の空間ではなくなってしまいます」と林さんは言う。

ここは台湾で唯一、レジのないレストランでもある。「この雰囲気はすっきりした空間と関係しています。それはご主人のセンスが生んだものです」と仏光人文社会学院芸術研究所の林谷芳所長は言う。

上質の食材を使った創作料理が美しく盛りつけられ、目の前に出されるたびに皆が賛嘆の声を上げる。まさに雅宴と呼ぶにふさわしい食事だ。

自然に生えてきた

50歳で独身の林炳輝さんは宜蘭出身、茶道を愛する、修行者のような雰囲気の人だ。微笑むだけで、自分の経歴は語らない。

８年前に食養山房を開くまで林さんはインテリアの仕事をしていた。友人の紹介で、地鶏料理食堂だったこの土地を倉庫にするために借りた。美意識が強い彼は、倉庫にも個性を持たせ、最も簡単な方法で自分らしい空間を作った。

そこへ、しだいに友人がお茶を飲みに来るようになり、多くの人がそのゆったりした空間を愛するようになった。そこで林さんはここに引越し、文化と創意に満ちたレストランを開くことにしたのである。

「食養山房はここに自然に『生えてきた』ように感じています」と林さんは言う。食養山房はレストランとしてデザイナーが設計したわけではない。「創意が生まれるのは自分が好きだからであって、人に気に入られようとして作るものではありません」と林さんは、この空間特有の魅力の鍵を語る。

「従来の産業は標準化や量産を重んじますが、クリエイティブ産業はその逆です。大切なのは質感で、それは創作者のセンスです」と林谷芳さんは言う。

上質の食材を使った創作料理が美しく盛りつけられ、目の前に出されるたびに皆が賛嘆の声を上げる。まさに雅宴と呼ぶにふさわしい食事だ。

台湾の懐石料理

空間だけでなく、料理にもご主人の個性が発揮される。

メニューはすべてお任せで、林さんが市場で選んだ食材を使ったオリジナルの料理が供される。原則として天然素材を使ったあっさりした味だ。「自分が食べたいと思う料理を出します。空間も料理も私が手がけるので、全体に統一感があります」と林さんは言う。

雅宴は冷たい前菜から始まる。淡いブルーの器に氷を敷いた上に鯛の皮とエビがサラダ風に仕立ててある。花をつけた桃の枝が添えてあり、風景画を思わせる。

続いて自家製のピーナッツ豆腐をいただいた後、さらに素晴らしい料理が出てくる。宜蘭産の刺身とレンコンを稲荷寿司の皮で巻いたものに、宜蘭の屋台で使われる山海醤というソースをかけたものだ。これこそ台湾らしい刺身料理である。続いて、桜の季節というので、林さんが摘んできた桜の葉と鯛を一緒に蒸した料理が出てくる。最後は、３時間かけて煮込んだ鶏と蓮の実のスープで、まったく文句の付けようのない食事が終わる。

コースの主な料理は７品、小鉢やデザートを加えると12品で、上述の他に宜蘭独特のさつま揚げや椎茸のおこわ、米の粉で作った客家の麺などの郷土料理も供される。料理の順番は、冷たいものから温かいものへ、そして最後に熱いスープで締めくくられる。合間には茶や酢や酒も供され、余韻を味わいながら次の料理への期待を高める。

酢は季節によって異なる。春は水蜜桃、夏はパイナップル、秋は木犀の花、冬は梅の酢だ。最後に出されるワインも有機葡萄のものだ。

「台湾文化は中国の根に台湾の実体があり、日本の影響も受けています。ここの料理はこの三つの元素を高いレベルで融合させることで精緻な美食となっています」林谷芳さんは、食養山房は郷土レベルだった台湾文化を一つ高いレベルに押し上げたと言う。

上質の食材を使った創作料理が美しく盛りつけられ、目の前に出されるたびに皆が賛嘆の声を上げる。まさに雅宴と呼ぶにふさわしい食事だ。

量産ではない道を

１人1200元か850元のコースが１日２食、１食100客とすると、月に500万元以上の売上がある。これをチェーン展開すれば、より大きな利益が見込めるはずだ。

だが林谷芳さんは、クリエイティブ産業は量産化するものではないと考えている。食養山房が一つの伝説となれば、これとは違う第二の食養山房が生まれ、文化のあふれる都市が形成されるのである。

山肌を乱暴に開発した地鶏食堂が、すべてこのような文化的な空間になれば、私たちの生活も変るに違いない。京都のように、主人の趣味によって異なる風情を持つ店がたくさんできれば、それがクリエイティブ産業の多様な価値なのである。

上質の食材を使った創作料理が美しく盛りつけられ、目の前に出されるたびに皆が賛嘆の声を上げる。まさに雅宴と呼ぶにふさわしい食事だ。

上質の食材を使った創作料理が美しく盛りつけられ、目の前に出されるたびに皆が賛嘆の声を上げる。まさに雅宴と呼ぶにふさわしい食事だ。