教会を芸術の殿堂に
1976年に新竹五峰山に赴任すると、古い教会の壁は剥がれ落ちて生気が感じられなかった。そこで神父は得意の絵を活かして教会を美しくしようと考え、まずステンドグラスを手作りした。色ガラスを選び、一枚一枚カットして組み合わせ、聖書物語や花や鳥を描いていった。
中でも神父がお気に入りの作品はキリストの祈りの図である。キリストの赤いローブのグラデーションが自然光を通して美しく輝き、黄昏時には優しい光に包まれ、薄暗かった教会に喜びが満ちてくるのが感じられる。
ステンドグラスの他に、祭壇の段には黄色と青のタイルをストライプ状に敷いた。「まるで山から湧き出る泉が川に流れていくかのようでしょう」と神父は言う。これは生命の泉を象徴し、これによって教会全体に生気がみなぎる。
清泉集落の住民の多くはタイヤルなので、神父は壁面に先住民の壁画を描いた。十字架にもタイヤルの伝統模様を用いている。文字や言葉を通さずとも、清泉住民への愛が伝わり、教会に先住民のモチーフを取り入れることで、教会が地元の信仰と文化の中心となった。
教会だけではない。神父は外のバスケットボール場の壁面にもモザイク画を施した。いずれも神父が考え抜いた聖書物語の絵である。石だけで巨人ゴリアテに立ち向かうダビデの勇気を描いた絵もあれば、タイヤルの伝説の勇士が太陽を弓で射る力強い絵もあり、いずれも困難に負けずに意志を貫くことを教えている。
モザイクタイルを用いた作品の制作には手間と時間がかかる。まず下絵を描き、小さなタイルを一枚ずつ貼っていく。そして一部分が完成するたびに人物の表情や全体の色を観察し、気に入らなければやり直す。こうして少しずつ進め、1985年に制作を開始してから15年後の2000年にようやく完成した。
教会の外には神父の母リリーを記念した天使像がある。マーチンソン兄弟が聖職者の道を歩むことを母親が支持してくれ、台湾の大地に半生を捧げることができたことへの感謝が込められている。