専門知識の継承で地元に根付く
大きな反響を目にした柯董事長は、台湾好基金会が池上で開始したイベントは、単に花火のような一時の感動にすぎないものでいいのか、それとも地元に根付き、住民の生活に影響を与え、次の世代に受け継いでいけるのかと真剣に考えた。池上の持続可能な発展を考え、柯董事長はその思いを池上の住人に伝え、基金会は支援に回り、住民が自ら芸術協会を設立し、フェスティバルを運営することを期待した。
池上の住民は最初は大規模なイベントの運営に自信がなかったが、それでも台湾好基金会に励まされて、地元での組織構築を開始した。2015年には池上芸術協会が設立され、台湾好基金会と共に翌年のフェスティバルの準備を始めた。まず比較的単純な作業から始め、次第にイベントの主要企画を担当するようになった。その過程において、台湾好基金会もスポンサーに向けて、将来的には池上芸術協会が主催する旨を表明した。
基金会では専門知識や人脈を池上芸術協会に引き継ぎ、主役を地元の人々に交代していった。最終的に2018年になって、秋収稲穂フェスティバルは池上芸術協会の主催となり、台湾好協会は広報など池上芸術協会が不得手な部分を補完するにとどまった。
李応平は、主役交代を提案した当初の住民たちの反応をよく覚えている。「私たちがいなくなると心配したようで」と彼女は笑うが、台湾好基金会ではその任務を花火を打ち上げるのではなく、しっかり根を下ろし、イベントの主催を地元に返して、そこにベースを確立させることだと説明したのである。地元と密接なつながりを有する場を構築しようと、基金会では2014年には池上アートビレッジ計画を開始し、2016年には穀倉芸術館を開設した。
基金会では芸術家を招いて滞在してもらい、アトリエや展示を通じて住民との交流を深めた。池上をテーマとした作品を創作してもらい、成果を池上に残してもらったのである。それぞれの芸術家の視点により、異なる風貌を見せる池上の姿は池上に新たな物語を加えていった。
李応平は池上に滞在した時期を思い起し、住民の包容力と芸術家の影響力も重要だが、この土地の文化を豊かに表現するには時間も必要だと語る。台湾好基金会は10年を単位としてプロジェクトを企画していて、数年での急速な変化は求めていない。一つの町が変わるには、時間をかけた努力と忍耐が必要だからである。
池上では書道が深く根付いており、住民の作品は池上駅や街角にも飾られている。