台湾では、先住民族、閩南人(福建南部系)、客家人、外省人(国民政府とともに大陸から渡ってきた人々)、新住民(結婚や仕事で移住してきた人々)など、さまざまな時代に海を渡ってきたエスニックの異なる人々が暮らしている。それぞれ言語や風習、信仰が異なり、経済資源をめぐる競争もあり、どの時代にも長い時間をかけて互いに適応しつてきたが、その間には対立や衝突もあった。
エスニックの融合という課題は、政治や経済、社会、文化などさまざまな面から影響を受け、単一の要素で全容を理解し解決することはできない。そうした中で『光華』にできるのは、エスニック間の相互理解を促進し、バランスポイントを見出すことだ。そこで、台湾に暮らす東南アジア出身の労働者や移住者の食や仕事、レジャー、宗教といった日常生活を知ることから始め、そこから彼らの考えやニーズを理解していけば、少しずつ隔たりを乗り越えられると考えている。
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成熟した社会は、コミュニケーションと理解と適応を通して安定的に進歩していくものだ。そうした中で、教育と情報伝達は重要な役割を果たす。例えば、十数年にわたりアオリイカ保護のために海洋保全を訴えてきた王銘祥は、台湾の環境教育に大きく貢献してきた。非営利組織Skills for Uは、ロシアで開かれた技能五輪国際大家で台湾が金メダル5、銀メダル5、銅メダル5を獲得した時の映像をネットで配信し、大学教育を重視する台湾社会に、別の視点をもたらしている。
教育部が実施するホストファミリー‧プロジェクトでは、十年来、103ヶ国から来た留学生5634人と全国各地の3248の家庭をマッチングし、異郷で暮らす外国人留学生に温もりある環境を提供している。これも台湾の国民外交の実践と言える。
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台湾では各地で常に興味深いことが起きている。今月はまず客家オペラの活躍をご覧いただきたい。栄興客家採茶劇団は、6年連続で「金曲賞」伝統及び芸術音楽部門の最優秀パフォーマンス賞や最優秀伝統舞台芸術オーディオ‧ビデオ出版賞を受賞している。劇団を受け継いだ鄭栄興が、いかに客家オペラを盛り上げて世界の舞台にまで進出させたか、ぜひお読みいただきたい。また、高雄市立美術館では今年、台湾初の大規模な東南アジア現代美術展「サンシャワー」を開催した。素晴らしい作品の数々が、東南アジアを理解する扉を開けてくれる。
もう一つ、百年の歴史を刻んできた台湾ビールの物語もお読みいただきたい。市場の変化と外国ブランドとの競争の下、台湾ビールは次々と研究開発とマーケティングに成功し、イノベーションを起こし続けてきた。来月の『光華』は、日本の九州を訪ね、食や文学、農業などの分野における台湾と日本との交流をご覧いただく。