世界の芸術を台湾に
1989年、蘭陽舞踊団はスペインで開かれた民族舞踊の世界大会に参加し、『江波舞影』で最優秀観客賞を受賞、またこれが1992年のバルセロナオリンピック芸術祭での公演につながった。これらの活躍が認められ、ユネスコのCIOFF(国際民族芸能組織委員会)から招きを受け、ミケリーニ神父はオブザーバーとして同会年次総会に参加、その後、神父と各界の尽力により、1994年には台湾もCIOFFの正式会員として認められた。現在、ミケリーニ神父は中華民国CIOFFの事務局長として、台湾における民族芸術の発展と交流に力を尽くしている。
1996年、蘭陽開拓200周年(漢人の呉沙が蘭陽を開墾)を迎えた宜蘭県で、ミケリーニ神父の提案によって「宜蘭国際キッズテーマパーク芸術祭」が誕生する。長年の国際交流が生かせる機会が訪れた。神父は世界から優れたパフォーマーを芸術祭に招き、人々に国際レベルの芸術を楽しんでもらい、それと同時に地元の芸術団体の国際交流も促した。「第1回からすごいものでしたよ」と神父は満足げに笑う。空前の成功を収めた宜蘭国際キッズテーマパーク芸術祭は、台湾の代表的な国際フェスティバルとなり、今や台湾人なら誰もが行ったことがあるというほどになった。
1991年のソ連崩壊後、神父は東欧に赴き、ロシアバレエのワガノワ・メソッドを教えられるダンサーを見つけてきた。そして2005年に蘭陽バレエ団を設立、西洋文化の良さを、自分たちの土壌にしようという考えだった。
それより先の1999年には蘭陽平原と亀山島に伝わる神話を舞踊劇にした『噶瑪蘭公主(カバラン王女)』や、地元の宗教行事を描いたダンス『搶孤』を発表するなど、蘭陽舞踊団は台湾文化の要素を取り入れていた。
ミケリーニ神父は若い頃、バイクを峠まで走らせ、蘭陽平原を見下ろすのが好きだった。黄金に輝く稲穂、水田に点在する民家、緑成す竹林、季節ごとに姿を変える亀山島、「宜蘭は本当に美しいです」と言う。2014年、神父の来台50周年に舞踊団は「至る所にバレエを」というイベントを催し、宜蘭羅東運動公園、羅東文化工場、武荖坑などでバレエを披露した。人々にもっとバレエに親しんでもらおうという神父の願いを、彼の最愛の風景の中で展開させるものとなった。
蘭陽舞踊団はローマ法王ヨハネ・パウロ2世(下)と会見し、ダンスを披露した。(蘭陽舞踊団提供)