試練は続く
しかし、打上げ成功の喜びも束の間、フォルモサット5号が2周目以降に送ってきた数値が「おかしい」ことに気づく。
張和本はフォルモサット5号を「我々の衛星」と呼ぶ。「我々の衛星は自分で角度を調節して、太陽に向いて発電します」だが、発射100分後から電力が落ち続け、システム保護のための休止モードが起動した。メンバーの沸き立つ心も谷底へ転落し、副主任の余憲政は涙をこぼした。発電できなければ任務は終了、「おしまい」である。
フォルモサット5号は99分で地球を1周する。コントロールチームは不眠不休でこれを追い、99分に1回届く情報を解読し、問題の所在を探った。チームは冗談めかす。「衛星は眠り続け、私たちはずっと眠りませんでした」
「3日後にアメリカから台湾に戻ると、分かったというのです」張和本は今だから朗々と話す。「リアクションホイール4つのうち、2組の配線が間違っていて、衛星が保護モード(フェニックスモード)に入ったのです。フォルモサット3号の設計を改良し、トラブル時に自動で保護モードになるようにしてあります」
「すごいチームです。飛行ソフトのプログラムは一行一行を自分で書いていますから、プログラムを修正し、配線を直したのです。4つのホイールに4の階乗(4!=4x3x2x1=24)で24種類ある組合せをシミュレーションし、地上から『修理』を試みました」解決後、コントロールチームは「もう怖いものなしだ」と言ったという。
米国人として初めて地球を周回したジョン・グレンは「真の英雄とは、障害に直面して諦める前に、最後にもう一度トライする人のことだ」と言った。フォルモサット5号の打上げは、台湾の宇宙技術が試練を乗り越える実力を証明した。
フォルモサット5号には台湾人が独自に開発した部品が多数使われている。衛星コンピュータやCMOSイメージセンサーチップなどだ。(林旻萱撮影)