上海万博で意気軒昂
上海万博で躍獅は新たなピークに立った。名だたる強豪の中から「中国館」のクリエイティブ・ディレクターに選ばれた姚開陽は「本当は、私たちは中国館の中のマルチメディアシアターの仕事を受けたかっただけなのです」と言って笑う。
2008年に行なわれた中国館のデザインコンセプト国際コンペには「力試し」のような気持ちで参加し、世界64ヶ国から名乗りを上げたトップレベルのチームと闘った。
「第一回のコンペで中国側から提供されたのは『自強不息、厚徳載物、師法自然、合而不同』の16文字だけで、そこからコンセプトを発想するというものでした。外国人はぽかんとしていましたよ」と姚開陽は当時を振り返る。
文化に根付いた創作という点では、中国史を研究する姚開陽には難しくなかった。幾度もの戦いを経て、彼らが提案した「3億の農民工が都市へ」「清明上河図インテリジェント長河」「黒暗騎馬」などの展示コンセプトは、すべて中国館に採用された(86ページの記事を参照)。こうして姚開陽は中国館のクリエイティブ・ディレクターとなり、そのチームは展示設計と工事を請け負うこととなったのである。
一方の台湾館は、2009年後半になってようやくコンペが始まり、躍獅と李祖原建築士事務所が提案した「山水心灯」プランが選ばれた。建築物の外観と展示方法が創意に満ちているということで対外貿易協会から高く評価されたのである。こうして姚開陽は、中国館と台湾館の両方のクリエイティブ・ディレクターを同時に務めることとなったのである。
だが、人もうらやむ肩書の背後には「決して失敗は許されない」という巨大なプレッシャーがあった。例えば、初めて導入するイマーシブ・シアターの影像効果を最大限に発揮するために、躍獅では社内に四角い木造の劇場を作って繰り返しテストした。そのためにメンバーは旧正月(春節)の休暇にも出勤したほどだ。
過程は辛く厳しいものだったが、中国館と台湾館のマルチメディア展示は高く評価された。それを実現した躍獅の注目度も大いに高まり、内外からさまざまな注文が殺到するようになっている。これを機に、躍獅は上海に広さ5000平米の3Dシアター展示センターを設立し、映画「アバター」で火がついた3Dマーケットの占有率を高めようとしている。2011年の売上は8億台湾ドルを超える見通しで、台湾海峡両岸で最も輝かしい設計チームとなる。
「十年寒窓無人問、一挙成名天下知」とはまさにこのことを言うのであろう。
躍獅が制作した3Dアニメフィルムは、内容がおもしろくて教育にも役立つので、日本や韓国、中国、東南アジアなどの博物館でも人気がある。
躍獅が制作した3Dアニメフィルムは、内容がおもしろくて教育にも役立つので、日本や韓国、中国、東南アジアなどの博物館でも人気がある。