温かく典雅な人物素描
『百年大師』で「台湾の孫文」と呼ばれた蒋渭水の執筆に当り、その全集をすべて読破し、現代文化評論家の観点も多数取り入れ、蒋渭水と読者との間の時間的距離を引き寄せている。
『百年大師』のもう一つの特別な点としては、100人の偉人の姿を写真ではなく、若い芸術家汪士倫の描いた素描としたことがある。素描にしたことで温かみある典雅な雰囲気が生まれた。肖像画は本人を思わせる写実的な表現ながら、伝記作者の偉人に対する理解と解釈を伝える役割を担う。王士倫は多くの史料を参考とし、人物を様々な角度から分析して、ようやく100人の肖像画を完成させ、この本に豊かな表情を与えた。
鄭貞銘は3年余り前に心臓の手術を受け、友人や弟子たちは年齢を考えて、手術後はしばらく休息するものと思っていた。ところが、手術後すぐに鄭貞銘は『百年大師』の企画と編著を開始した。出版費用や原稿料にめどがつかない中で、彼は二人の学生と百人の偉人の伝記と肖像画を完成させた。それは一種の使命感とも言えるだろう。幸いなことに、音楽家の簡文秀と実業家の李台山などから寄付を得ることができ、『百年大師』は出版にこぎつけることができた。
鄭貞銘は唐代の詩人李商隠の詩「夕陽限りなく好し、只だこれ黄昏に近し」とあるが、今この時の人生は彼にとって「夕陽限りなく好し、彩雲はなお天に満つ」であるという。この時に至って、思惟は成熟し、しかも人生の智慧を豊かに抱く段階に至ったのである。「今こそ、この百年大師のような本を書くのに最良の年となったのだろう」と鄭貞銘は思う。この編著の過程において、しばしば涙があふれたのだが、それは「この百の人生は百の手本であり、百の物語は百の感動を生みます。この感動を多くの若い人々に贈りたい」からなのである。