風水と石獅子
今回の台北市美術館の「蔡國強『泡』美術館」というタイトルは、作品「文化大混浴」から来ている。これはアメリカ時代の出世作でもある。
美術館の右側ホールの外、絶好の風水とされる中庭には、10数本の松の鉢と18の太湖石が置かれて、さらに黄蓮や人参など漢方薬を浸したジャグジーのバスタブが並び、好奇心旺盛な見学客が水着に着替えて浸り、インスタレーション・アート「文化大混浴」の一部となっている。
ニューヨークはそもそも文化の坩堝と、蔡國強は大混浴でニューヨークに着いたときの思いを表現した。この作品を世界各地で展示するとき、漢方医にさまざまな処方を依頼し、太湖石も現地の風水により配置を変える。これも見学者が最良の「気」を受けるためで、バスタブのジャグジーの位置も風水に従って良い位置を選ぶ。
理性とマルクス・レーニン主義の弁証主義を信じる蔡國強だが、矛盾することに風水を信じ、目に見えない世界を信じる。この迷信は祖母譲りで、祖母は小さいころから女呪い師に孫の世話を頼んで、病気や何やらを解決してきた。その後、孫が留学したり展覧会を開いたりとなると、専用のお札や呪文を貰ってきた。
アメリカで個展を開いたときも、風水をテーマに選んだ。「あなたの風水−2000年のマンハッタン計画」と題し、泉州から石獅子99体を運び、マンハッタンに展示した。
その石獅子は展示するばかりではなく、家の風水に問題がある観客に即売した。購入を申し込んだ400人の家を見て回り、風水を判断してよくない場所に石獅子を置いたのである。
面白いことに、大抵のお金持ちはプロの設計者に依頼していて、家の風水には問題がないことが多いのだが、それでも石獅子を買いたがったという。そこで希望者の悩みを聞いてみる。ご主人の浮気を心配する買い手であれば、ご主人の主位に石獅子を置いて抑え込み、めでたしめでたしということになった。
即興で12時間活動する女性ダンサーのシルエットを中心に、火薬を用いて繊細な女性の肉体と各種の花を表現する。蔡国強は作品「昼夜」を通して平面のドローイングとパフォーマンスを融合させる実験を行なった。