脳腫瘍を可視化
最初、徳盟の医療内視鏡は研究や教育に使われた。成功大学医学部などの教授の委託を受けて、学術研究に用いる子宮鏡、胆管鏡、咽頭鏡を開発し、更には臨床での課題解決に取り組んだ。
曾湘徳が医療用内視鏡のすごさを思い知ったのは、長庚病院で行われた生後2ヶ月の乳児の脳腫瘍切除術だった。医師が徳盟の医療用内視鏡を使って腫瘍をはっきりと照らし、切除した。取り出した組織の病理診断で再度悪性腫瘍を確認したとき、手術室は歓喜に沸いた。
その全過程を記録していた曾湘徳が説明する。マイクロサージャリーでは、医師は肉眼で腫瘍を確認できない。蛍光診断薬5ALAを投与して、徳盟の内視鏡システムの光線力学波長の光源で照らすと、薬剤を吸収した腫瘍細胞がピンクに光り、精密な切除が可能になるのだ。
更に、内視鏡では腫瘍がどこにあるか見るだけだが、医師は適切なツールでそれを切除しなければならない。この困難な局面を、徳盟は新たなビジネスチャンスに転換し、脳神経外科主要切除補助ツールを開発した。
曾湘徳は2019年から、磁気誘導式内視鏡の開発にかかっている。ナビゲーション機能をもち、精密に腫瘍に誘導できる。2022年には完成する見込みである。また、感染防止に役立つディスポーザブル内視鏡の開発にも成功している。
「医療用内視鏡に取り組んだのは、人の役に立ちたいというだけの熱血でしたが、それが私に、腫瘍の見える内視鏡を設計させたのです」政府が指導する医療機器材産業のマイクロサージャリーとAIへの発展方針に沿い、医療用内視鏡産業に台湾の医療産業のスポットライトが当たっている。
この8年、医療用内視鏡の開発に取り組み、数々の手術の成功に貢献してきた。曾湘徳は感慨もひとしおである。「今は医療をよく理解しています。もし母にいま悪性腫瘍が見つかっていたら、内視鏡で腫瘍を見つけ出し、手術と陽子線治療で、結果は違っていたはずです」
脳神経外科の腫瘍切除用補助ツールは改良を重ね、すでに第7世代になる。
徳盟儀器の内視鏡システムの特殊な光線力学波長の光源で照らすと、薬剤を吸収した腫瘍細胞がピンクに光り、精密な切除が可能になる。(徳盟儀器提供)
徳盟儀器の内視鏡システムの特殊な光線力学波長の光源で照らすと、薬剤を吸収した腫瘍細胞がピンクに光り、精密な切除が可能になる。(徳盟儀器提供)
徳盟儀器の内視鏡システムの特殊な光線力学波長の光源で照らすと、薬剤を吸収した腫瘍細胞がピンクに光り、精密な切除が可能になる。(徳盟儀器提供)
徳盟儀器は将来的に医学センターと協力し、臨床のニーズに合わせてカスタマイズした製品を開発していく。