異業種協力で弱点を解決
場面は台中・外埔の明昌国際工業に移る。この日、明昌に勤めるスペシャルアシスタント陳琮仁をはじめ、異なる業種・企業の6人が集まっていた。6人の繋がりは、台中教室マネジメントコースで共同で完成させたプロジェクトであった。
「さあ、工場に案内しますね」陳琮仁が一行を連れて大甲にある工場へと足を踏み入れる。工場にはベルト状に生産ラインが並び、金属板材が様々なゾーンを通って加工されていく。切断、曲げ、溶接、塗装、そして最後に包装を経てトラックに積み込まれるのを待つ。
皆の足が、塗装の検査ゾーンで止まった。ライン脇では品質検査員が懐中電灯を持って、上から下へ、製品の正面から裏側へ、欠陥がないか慎重に検査していく。高いところにはカメラが設置され、ライン上の完成品を撮影している。
時は数か月前にさかのぼる。AIアカデミーの学期が始まって間もなく、陳琮仁は工場の生産工程に基づき「動的塗装工程のAI+外観検査」をテーマとして提出した。人工知能で画像データから製品の外観に不具合がないか判定できるようにしたい。そうすれば、バラつきがあり、流動率も高い人手に頼らずに済む。説明を聞いて興味を持ったメンバーを集めることができた。
異分野協力を学び、分業から統合へ、それぞれの専門領域から貢献する。画像認識には、まず画像データを分類し、良品と不良品を学習させる。仕事で品質管理をしているメンバーが、不良品基準の構築を支援する。プロジェクトマネジメントをしているメンバーは、時間管理、費用、人員配置を担当した。プログラムを書く段階になると、AIアカデミーのマッチングで、エンジニアコースで学ぶ逢甲大学の友人が来てくれた。
プロジェクトはとっくに終わっていたが、明昌にとってはAI化の第一歩を踏み出したに過ぎない。陳琮仁は、4ヶ月のコースではシステムの雛型しかできなかったという。画像データの収集がまだ足りないため、集積するに従い6ヶ月後に判定精度95%に達したら、ラインに投入する予定である。次の一歩は、工場内部のIoTである。工程のパラメータと良否判定を融合し、AIで品質を予測していく。
成熟すれば、航空宇宙、工作機械、自転車、工具など、板金塗装に関連する産業に応用でき、中部の大小様々な製造業者が恩恵に与かる。
大切なのは、従来型産業がグレードアップすることで、コスト削減にしのぎを削らなくてすむように手助けすることである。台湾AIアカデミーのCOO蔡明順が「台湾には隠れたチャンピオンがたくさんいますが、それでも相変わらず競争力に欠けるのです。グレードアップによって、海外から受注が入り、他所じゃダメだと言われるようにならなければ」と言う通りである。台湾はAI大国になれるのか。彼は信じて疑わない。
玉山ファイナンシャル・ホールディングスCTOの陳昇緯は、AI伝道師のように積極的に活動し、産業界にAIを活用するよう呼びかけている。
「動的塗装工程のAI+外観検査」チームは、一緒に困難な課題を解決する中で結束を強めてきた。
これまで人手に頼ってきた品質検査の仕事も、AIが取って代わることになるだろう。
充実したカリキュラムを経て、生徒たちは産業界の重要なAI推進者となる。(荘坤儒撮影)