生産流通制度の改善とブランド化
台湾の農業流通制度も、技術団がプログラムで普及させたいものの一つである。台湾では1952 年から組合が新しい農作技術を広め、総合的な農事研究班を設けたのが、生産流通班組織の雛形になった。六十数年が経過し、台湾の農業運営の基礎となっている。一方、インドネシアでは、政府の指導を通じて地方や地域を単位に生産流通組織がすでに数多く成立しているが、分業・組織は専門性が足りない。
莫国中の説明によると、インドネシアの生産流通班は台湾のような共同経営を採用しておらず、 現地の生産流通班がそれぞれ取り仕切って互いに競争しており、求心力に欠ける。多様な流通ルートを欠き、生産流通班の班長が卸売業者も兼ねて生産者から収穫を買い取る。「それでは理想的な価格にならないことが多いのです」
推進二年余りでは、インドネシアの流通体系は変えられない。しかし「農産品の価格を引き上 げ、耕作の専門性を高めることは可能です」。そこで、ICDFの指導の下、バンドンとベジタブルから組合を「BAVAS」と名付け、市場における農産品ブランドの知名度拡大を図った。「ブランド化することで農産品の価値が向上します」と莫国中はいう。
インドネシアの5~6%もの経済成長率ととも に、台頭する中間層の間では青果の品質・安全へ の要求も高まっている。しかし食品安全検査制度が完備されていない現状では、台湾国際合作発展 基金会技術団「ICDF」のマークが、市場において安心野菜の品質保証になっている。
試験運転中の集荷場も、農産品の価値向上に一 役買っている。2016年には技術団の支援で同様にレンバン農業訓練センターに設置された集荷場が落成した。広々と明るく、冷蔵・等級分類・洗浄・ 包装・配送などができる機能完備の集荷施設である。多くが簡単な家内分業で処理しているインド ネシアでは、まだ珍しい。「将来は収穫したら集荷場の等級分類の現代的な管理で、農場の付加価値を高めていきます」莫国中が語る。
別のエリアには大型のスマート温室が4つあり、台湾の農業自動化のテクノロジー管理方式が見られる。ICDFバンドン・ワークステーションの 技師・潘泊原によると、大型スマート温室は、散水や日照調整を全自動制御する。温度・湿度・空気の流れなどのデータも、コンピュータで収集し、温室の状態をリアルタイムに把握できる。
インドネシアの農家のほとんどが高額な自動化温室設備は負担できないが、デモンストレーショ ンの機能は果たしている。特にインドネシアも台湾と同じく、若い世代の農業離れに直面してい る。「自動化温室管理によって、農業もテクノロ ジーでこれほど変わるということを、生産者に示すことができるでしょう」莫国中はいう。
自動化温室は、台湾企業が農業資材を東南アジ ア諸国に輸出するビジネスチャンスでもある。イ ンドネシアでは竹など安い資材で温室を作るのが普通だと潘泊原はいう。
しかし、台湾とインドネシアは気候条件が異なる。台湾では台風など気象の変化に対応しなけれ ばならないが、インドネシアでは日照過多や高温 により注意が集まる。台湾の温室設備を輸出しても、現地のニーズに合うとは限らない。
「気候条件に合わせてユニット化した資材な ら、可能性があるかもしれません」と潘泊原はい う。現地の農家は季節や場所に応じて、耕作に適した弾力的な設備調整を行う。「台湾の自動化設備が浸透すれば、生産者が経済的に負担できるようになって、設備資材を購入しようと思った とき、台湾の設備が優先的な選択肢になるでしょう」莫国中はこう考える。
種苗育成・耕地管理からバックエンドの流通経営に到るまで、類似の援助協力には前例がある。 2011年、ICDFはインドネシア国立ボゴール農業大学が管轄する「ボゴール・アグリビジネス経営振興センター」と協力し、専門性の高い農作と流通を通じて、生産者の収入を向上させた。
協力期間中、生産者の専門知識向上や流通問題解決のほか、トマト、パプリカ、ジャガイモ、 アジアの野菜など高価格の人気野菜や果物の耕作を支援した。中でも「クリスタル・グアバ」は試作を経て、今ではスーパーにも並ぶ。在インドネ シアの台湾事業者が10ヘクタールの果樹園で栽培し、毎月100トンを生産している例もある。
ICDFバンドン・ステーションで開かれる研修会では、農家の人々に正しい農業知識を伝えている。