映画が終わると、観客はストーリーやスターの魅力に浸りながら席を立つが、映画の効果音や編集などを通してその作品に多くの人が深くかかわっていることを知る人は少ない。
『光華』はこれまで幾度も映画を特集してきた。世界に知られる映画監督の李安(アン・リー)や侯孝賢(ホウ・シャオシェン)、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)らの創作の道、それに映画俳優の王羽や李康生らの人生を紹介してきた。
今月号のカバーストーリーでは、今までと少し角度を変え「銀幕を支える人々」をテーマに、裏方として映画を支える英雄たちをご紹介する。
フォーリー・アーティストの胡定一は、40年にわたって魔法のように効果音を生み出してきた。目を閉じて映画の音に耳を傾ければ、そこで何が起きているのかがわかる。映像編集者の廖慶松の物語を読めば、ポストプロダクションの編集がなければ、名画など決して生まれないことがわかるだろう。
彼らは若き日に映画に出会い、白髪になるまで、台湾映画史のほぼ半分に携わってきた。映画に対する情熱だけを頼りに、映画産業の栄枯盛衰に関わらず、数十年にわたってただひたすら良い作品をつくるためだけに力を注いできた。
映画に対する情熱と言えば、謝森山と顔振発という二人の老職人を忘れてはならない。それぞれ台湾の南部と北部で素晴らしい手描きの映画看板を制作し続け、デジタルの時代に手描きの温もりを伝え続けている。さらに江明؛.や陳威僑をはじめとする若い世代は、古い映画館に再び生命を吹き込もうと奮闘している。
今月号では、このほかにも期せずして同じく「光」に関わる三つの物語をご紹介することとなった。世界的な照明デザイナーの周錬は「人を中心に、環境と呼応」を信念に、百年の歴史を持つ北港朝天宮や恒春古城などのライティングをデザインし、古跡に新たな生命を吹き込んだ。中強光電文化芸術基金会は、「光の加減法」による地方改造を試み、それによって地域に対する人々の誇りを取り戻そうとしている。カナダ在住の画家・厳栄宗は類を見ない彫刻技術を持ち、自ら絵画の「追光技法」を生み出してその作品に独特の光と影を描き込む。この三者が描くのは「台湾の『光』」三部作である。
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「旧宅/記念館を訪ねる」シリーズでは、舞踊家の蔡瑞月、国学の大家・林語堂、画家・陳澄波の旧宅に続いて、今月は「台湾新文学の父」、「台湾の魯迅」と称えられる作家・頼和の故郷である彰化を訪ねる。生涯にわたって社会と弱者に関心を寄せ、義のために闘い続けた頼和の作品を読みながら、その故郷を歩いていく。
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時は五月、咲き誇る春の花のように、『光華』も皆様に新しい季節をお届けしていきたい。