生態vs.環境
だが、市のど真ん中にある学校で、自然生態を「複製」することは想像するほど容易ではない。植物は人工植栽すればいいが、動物はどうするのか。
実は観察台と遊歩道の下方に3メートルほどの太さのパイプがあり、校外の動物たちを招き寄せる通路となっている。現在、ここによく現れるのはトカゲやミミズ、ヤスデなどだ。
池の周辺ではヒキガエルもよく見られる。毎年秋から冬の繁殖期には、2匹のオスガエルがメスを争い、メスがほとんど押しつぶされそうになっている光景を見かける。これも命の継承や生存競争などを教える生きた教材だと、張先生は言う。
かつて理科を教えていた張先生は、台湾の野生動物保護リストから昨年はずされたばかりの「貢徳氏赤蛙」が観察台にいるのを最近見かけた。細長い頭に白い唇を持つ体長約7センチものこのカエルが、果たして専用通路を通って来たかどうかは定かでないが、校内の生物の多様性を示すもので、子供らにとっても嬉しい驚きだった。
だが都会の子供は過保護に育てられている。親は自然とのふれあいを歓迎するものの、子供が蚊に刺されるのは好まない。特にデング熱の流行る夏には殺虫剤の散布を願う。だがこれらの薬剤は土壌や池に流れ込み、動植物の生息地を破壊する。
解決策として、学校は池でタガヤシとタイワンキンギョを飼うことにした。これらはボウフラを食べてくれるからだ。食物連鎖を利用したこの害虫退治は確かに効果を発揮している。
そんな中、週末の人の少ない時をねらって飛んで来るシラサギに、今度は頭を悩ませられている。シラサギの飛来は本来、大歓迎だ。ところがシラサギはタイワンキンギョを食べてしまい、蚊をはびこらせることになる。が、「これも生態の自己調節機能を教える良いチャンスです」と張先生は言う。そこで、食べつくされてしまわないよう、学校はタイワンキンギョを定期的に補充することにした。
天然資源のリサイクルも双蓮小学校の大きな特色だ。生態池の水や植物にやる水はすべて校舎の屋上に設けられた雨水回収装置から来ている。
ほかにも、生態池のそばにある四つの大きなコンテナには校内の30本ほどの木の落ち葉が集められ、有機堆肥が作られている。箱が満ちると水をかけ、泥土を混ぜ、シートをかぶせておけば、5〜8ヵ月後には肥料になる。その肥料で育てたクワの木があまりよく育つので、近所の蚕飼育業者がやっかみ、夜間にクワの葉をごっそり取っていってしまったほどだ。学校は巡回を強化した。
児童・教師数1600人の双蓮小は都会の学校の例に漏れず、近くに川も山もないが、コンクリートジャングルの中に自然生態系を作り上げた。それは小さくはあるが、とても美しい。