台北で口火を切った樹木葬、散骨
自治体の中でも、人口が集中し地価が高い台北市で、自然葬が最初に重要な政策目標に掲げられた。2003年11月、文山区に位置する富徳公営墓地の富徳生命記念公園で正式に始まり、約200坪の土地に羅漢松、ガジュマル、キンモクセイなど15本が植えられている。一本毎に周囲1メートルに10の墓穴が設けられ、中央花壇は散骨区域に設定されている。
樹木葬を行う前に、家族は好みの樹木を選び、管理人に導かれてスコップで上部の砂利を取り除き、直径10から15センチ、深さ20センチの穴を掘り出す。生分解不織布の袋に入れた遺灰と生花を入れて、再び土を被せて終る。散骨では特定の位置はなく、指定された花壇に自由に散骨する。散骨した後、1センチほど土を被せて飛び散ったり流されるのを防ぎ、花びらを散らす。
推進のために樹木葬も散骨も無料だが、碑を建てることはできず、お香を焚いたり読経などの儀式も認められていない。
開始当初、一般に自然葬はなかなか受け入れられず、台北市葬儀管理処は少なからぬ抗議の電話を受けた。たとえば「遺灰を樹木の下に埋めて時が経つと、映画のように樹木の妖怪に支配される聶小倩(怪談映画のヒロイン)になって、成仏できなくなる」とか、「公園というからには子供が遊ぶべき場所なのに、遺灰を撒かれては縁起でもない」と文句を言われた。
こういった誤解に、台北市葬儀管理処は気長に説明を続けた。樹木葬も散骨も、中国人の土に入って安んずる伝統に叶うものだし、生命と自然が合一できる。公園としたのは、一般的な墓地の陰鬱な雰囲気を取り払い、ここに来れば遺族が静かな温かみある途切れることのない希望を感じられるようにしたのである。
実際、自然葬を選ぶ人は年々増え続け、今年2月現在、上述した公園と2007年にオープンした富徳詠愛園(1.2ヘクタール、6000の墓穴が設置され、10年期限で使用)には、すでに1799人が葬られている。そのうち半数が台北市以外の人で、自然葬が時代の流れとなっていることが分る。
人生の終着駅で最も清らかな姿で大地に還れば、人生の価値をより円満にできるかも知れない。左は「員山福園」の静かな入り口。右は先例を開いた台北市の「富徳生命記念公園」。