技能で社会と対話する
「取材は金メダルの選手に光を当てるだけではありません。技能の道を選んだ子供たちにエールを送り、様々な職業の人に技能職の分野に進んでほしいのです」
報道で発信していくほかに、体制との対話を通じて、具体的に台湾の技能教育を変えていきたいと考えた黄偉翔は、2018年1月に、仲間とNPO「Skills for U」を立ち上げ、「技能で社会と対話する」理念を広めている。これは国連の持続可能な開発目標(SDGs)に掲げる公正な質の高い教育に呼応するものだ。異なる技能をもつ人が、様々なソリューションを生み出せば、多様な社会的課題に応えられるようになる。
昨年末、黄偉翔はナショナルチームの選手8人を率いて、新北市萬里区大鵬小学校を訪れ、駐車場わきの遊休スペースを、美しいコンテナ教室に改造した。それは、子供たちの心を魅了するアートスペースになった。Skills for Uのカリキュラムは、例えば工作の授業なら、子供たちが実際に模型を作り、鄭和が南海遠征でどこに上陸したのかをシミュレーションし、木工に地理と歴史の学習を盛り込む。調理科の生徒は一人暮らしの高齢者に食事を作り、デザイン科の学生は社会的弱者のために衣服を作る。「技能で社会の課題と対話し、問題を解決します。そして技能を学ぶ中で、社会問題を考えられるようになるのです」
黄偉翔は技能の道を選んだ若者に伝えたいことがある。目先の収入を考えるだけでなく、仕事における積み重ねや人生の経験も、いつかは全て実質の収入に変わっていくと。「技能をもった人材は、モノづくりの労働者であるだけでなく、社会を共に良くし、持続させる重要な人材です」この道のりが長いかどうかは分からない。だが黄偉翔は、自分が歩き続けることを知っている。
黄偉翔はペンの力で職業高校に対する世間の認識をくつがえし、職業高校に学ぶ学生たちに誇りをもたらしている。(荘坤儒撮影)
グラフィックデザイン技術部門で金メダルに輝いた廖羿婷。他の受賞者とともに喜びの瞬間を写真におさめた。