理想が詰まったトートバッグ
ペットボトルの原料はポリエチレンテレフタレート樹脂。回収・洗浄・粉砕の後、溶融しフレークにしてから、紡糸・紡績・織布等の工程を経て、リサイクル繊維が服飾繊維製品に使われる。
台湾のペットボトルリサイクル繊維製造技術は非常に成熟しており、数多くの世界的ブランドのファッションに台湾のリサイクル繊維の姿が見える。例えば、2018年のワールドカップ・サッカーでは、16か国の選手が台湾のペットボトルリサイクル繊維で作られたウェアを着ていた。
FNG創設者の蔡僅鵬によると、ほとんどのブランドで、リサイクル繊維の使用は各製品の10050%に止まるという。理由は技術ではなく、コストである。回収し、人の手で色ごとに分け、汚れがひどいものは、中にタバコの吸い殻や檳榔が入っていれば選別して洗浄するが、ペンキであれば使えない。更に、ペットボトルリサイクル繊維の製造工程は複雑で、技術的なハードルも高いことから、そのコストは新しい原料で作った繊維より40%ほど高くなる。
コストが大幅に高くても、蔡僅鵬は、100%リサイクル繊維で、壊れたらまた元の姿に戻せて、再度リサイクルできてこそ、真の循環経済の実践だと考えた。そこで、FNGの製品は、使用年限に達したり、破損して使えなくなっても、リサイクルできることを期待した。そうすればゴミにならず、環境の負担にもならない。
更に、蔡僅鵬は弱者も支援したいと考えた。そこで、ペットボトル繊維で作ったトートバッグのクラウドファンディング・プロジェクトには、ウェスト・ピッカー(廃棄物回収者)に優しいペットボトル買い取りプランも加えた。FNGは、ウェスト・ピッカーの支援に携わってきた社会的企業「人生百味」と協力し、相場の5倍の価格で回収者からペットボトルを買い取る。
ウェスト・ピッカーに金を渡せばいいのにという意見もある。だが、ウェスト・ピッカーは汚名を着せられていると蔡僅鵬は言う。それぞれが辛い物語を背負っているのである。終日拾い集めても、数百元の収入にしかならない。やむない選択なのだ。それでもウェスト・ピッカーは、労力で収入を得る努力をしている。ペットボトルの買い取り価格を上げられたら、弱者が力を手にすることができる。適正な報酬は、ウェスト・ピッカーを経済的に助け、真剣に生活する彼らを尊重することにもなる。
エコと弱者支援を看板に、普通のエコバッグを売るのは嫌だった。蔡僅鵬にとって、FNGのデザインするトートバッグは見た目よく実用的でなければならなかった。このトートバッグは、バッグとしても、畳んでドリンクホルダーとしても使える。高さ30cm以上のトートが、畳むと手のひらより小さくなり、携帯に便利になる。材料はリサイクル繊維とボタン3つだけで、3種類の使い方ができる。ボタンの位置は、収納だけでなく、ドリンクホルダーにした時の重心を考えねばならない。こうしたディテールは1ミリずつ調整していった。一見シンプルなトートが、実は奥が深いのである。
FNG世代設計を創設した蔡蔡は、回収したペットボトルにデザインの力で新たな生命をもたらした。